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薄型テレビの動画ボヤケ、倍速ってなに?(2ページ目)

薄型テレビ、特に液晶方式は動画ボヤケがあることが弱点といわれてきました。この秋は各社から新提案が相次いで発表される模様、「倍速」の意味も含めて、今回は「動画ボヤケ」をテーマにしてみましょう。

大橋 伸太郎

執筆者:大橋 伸太郎

テレビガイド

実際に動画性能を確かめるには、
どんなところに注目すればいいのか

私の手元に一枚のブルーレイディスクがあります。『Hi-Definition Reference Disc~ハイデフィニション・リファレンス・ディスク』\9,975 税込)がパッケージに書かれたタイトルです。製作・著作はキューテックですが、このディスクの中の動画解像度のパターンはAPDC次世代PDP開発センターが開発したものです。

APDC(Advanced PDP Development Center Corporation)はプラズマテレビの開発3社(松下電器産業、日立製作所、パイオニア)によって設立された研究機関で、テレビの動画表示の指標として従来の静止画面による画面解像度に対する新しい概念として「動画解像度」を提案したのです。

その「動画解像度」を測定する目安として、新たな評価画像パターン(レゾリューションチャート)を作成し、「テレビの動画像の動きを模した速度で動かすことで、目視による主観的な定量評価が行えるようにした」※ものがこのディスクに収められているわけです。
※APDCのプレスリリースから引用

「FPD benchmark Software」に収められた「動画解像度」のレゾリューションチャート。静止画解像度のチャートをスクロールして、楔状の線が分離して見える限界が「動画解像度」になる。プラズマ方式に比較して液晶方式は限界値がやや低くなるとされる。販売店で同種のチャートをテレビに映して一度実際に試して欲しい
『Hi-Definition Reference Disc~ハイデフィニション・リファレンス・ディスク』に収められた「動画解像度」のレゾリューションチャート。静止画解像度のチャートをスクロールして、楔状の線が分離して見える限界が「動画解像度」になる。プラズマ方式に比較して液晶方式は限界値がやや低くなるとされる。販売店で同種のチャートをテレビに映して一度実際に試して欲しい


プラズマ方式メーカーによって考案された、液晶方式にとってはやや不利な内容なのですが、「動画解像度」はテレビの性能の指標として一定の価値があります。

『Hi-Definition Reference Disc=ハイ・デフィニィション・リファレンス・ディスク』(製作・販売キューテック \9,975)ハイビジョン映像・音声用のチェック用ブルーレイディスク。液晶テレビの動画ボヤケや動画解像度を実際に確認することができる
ハイビジョン映像・音声用のチェックディスク。ブルーレイレコーダーかPS3がお手元にあれば、液晶テレビの動画ボヤケや動画解像度を実際に確認することができる。高価な薄型テレビを買う前に一度試してみたい内容購入はこちら(Amazon)
みなさんが、販売店で液晶テレビの動画ボヤケや動画解像度を実際に確認する手段として、販売員さんに『Hi-Definition Reference Disc=ハイ・デフィニィション・リファレンス・ディスク』やそれに近い内容の評価用ディスクを入力してもらうのが一番わかりやすいと思います。その場合、先に上げた解像度チャートよりも具体映像を見た方がわかりやすいでしょう。具体的には次のような映像があります。どれもこの種のテストディスクに共通して入っている映像です。

■右から左へ画面を横切るクルマを撮影した映像 
ナンバープレートの数字の輪郭が崩れないか

■世界地図の上をカメラが移動していく
細かな文字や国境を示す線がちゃんと読めるか

■ハンモックやブランコに揺られる女性
女性の服の模様が崩れないか。女性の顔がしっかり判別できるか

ここまでお読みになって来ると、液晶方式ばかりが動きに弱く、プラズマ方式は動きの表現にいささかも弱点がないようにお思いになるかも知れません。しかし、プラズマ方式にも映像の動きに対して完璧とは言えないのです。例えば、今最初に上げた「クルマのナンバープレート」を例に挙げると、プラズマテレビの中には数字の右端に色割れ現象が起きて緑色の色ずれが見られることがあります。

これは、動画表示時に、RGBのセルが揃って発せず(トラッキングずれ)、遅れる画素がある(というか、先に飛び出してくる画素があるといった方が正しい)ことが原因になって起きます。ナンバープレートは一番分りやすい例ですが、プラズマテレビの映像を凝視していると製品によっては、人物の動きでもそれが認められることがあります。

「FPD Benchmark Software」に収められた「動画解像度」の具体映像によるテスト映像。右から左へ走りすぎるクルマのナンバープレートに注目。数字がブレて判読が難しくなる場合がある。プラズマ方式の場合、数字の周囲に緑の色ずれが出ることが多い。数字が二重に見えるのは、I/P変換(インターレースからプログレッシブへのアップスケーリング)が上手くいっていないから
「FPD Benchmark Software」に収められた「動画解像度」の具体映像によるテスト映像。右から左へ走りすぎるクルマのナンバープレートに注目。数字がブレて判読が難しくなる場合がある。プラズマ方式の場合、数字の周囲に緑の色ずれが出ることが多い。数字が二重に見えるのは、I/P変換(インターレースからプログレッシブへのアップスケーリング)が上手くいっていないから


また動きそのものの表示とは別ですが、PDPは「誤差拡散法」という手法で映像の階調を有限のビット数の中で表現していて、そこから生まれるザワツキのようなノイズが動画で気になることがあります。

つまり、動画の表現について液晶方式やプラズマ方式は未だ完璧な物はありません。冒頭に書きましたが、液晶方式のIPS陣営は180Hz駆動パネルを発表、VA方式の某社はそれを上回る高速駆動の製品を準備中のようです。「動きボヤケ」をキーワードに薄型テレビ売り場を覗いてみると、細かなクセが見えてきて各社の性能差がわかり、製品選びがグッと面白くなるはずです。

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