大学を決めるポイント「倍率」
受験生は倍率に敏感に反応する。前年度倍率が高い学部学科は翌年敬遠される傾向が多い。また、倍率が低い学部学科は翌年持ち直すようだ。これはともかく、その大学に行きたいというブランド志向の受験生が多いからだろう。倍率も入学定員を志望者で割ると、見かけの倍率でしかない。実際は大学は他の大学に流れる学生がどの程度いるかを考えて(これを「歩留まり率」という)、合格者を割り増ししている。ところが、入学させられるだけ入学させ定員の1.3倍を越えると、文部科学省は助成金をカットしたり、翌年の新設学部学科を認可しない。そこで各大学は、一般に補欠合格者をだしてこれに対応しているようだ。
世間の想像では、倍率と難易度は正比例するように思う。東大や京大、早稲田大や慶應義塾大はかなりの倍率になるように思うだろう。実際は2007年~2008年度で、以下のように変化している(括弧内は2007年で実質倍率)。
東大 文1 2次試験3.0倍(3.0倍)
京大 文 2.9倍(2.9倍)
早稲田大文 7.5倍(2008年のみ)
慶應義塾大文2.4倍(2.4倍)
意外な結果ではないだろうか。実際は思っているほど倍率は高くない。このような最難関大ではとりあえず受けてみようという浮動層の受験生がなく、志願前から厳選されているからだと言える。レベルがその下になってくると浮動層が増えるので、かなり年度によってばらつきが生じてくる。
これを理工系の学部で比較すると面白い結果が出てくる。
東大理1 2.4倍(2.4倍)
京大理 2.7倍(2.6倍)
早稲田大 基幹理工 4.0倍(2008年)
慶應義塾大理工 2.9倍(3.0倍)
全体的な傾向としては、私立の理工系の学部学科の人気が低調だ。私立の学費が高い。数学や物理、化学などの教科対策が面倒であるといった理由が多い。
つい最近まで景気の動向が上向きだと思われていたので、文系でも就職がいいだろうという風潮もあった。しかし、今後景気の不安な要素が資格取得ができる実質的な学部学科や理工系の学部の再評価につながりそうだが、安易な方向に流れる受験生もいる。薬学部も6年生になったら、全体的に人気にかげりが出ている。
大学の受験期、自分の人生の大きな流れのなかで職業についてじっくり考え、その中での一段階として大学を選択してほしい。大学がすべてを決めるのではなく、自分が方向性を決めればどの大学に入学しようともあまり変わらないのだから。
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