ハワイ島、マウナロア山の巨大な噴火口。溶岩を吹き上げたあともガスを吐き出し続け、その形は猛スピードで変わっている。©TBS「世界遺産」 ※写真はクリックで拡大 |
地球温暖化なども意識されているのですか?
高城ディレクター:
今回はもう少し大きく、地球進化史の流れで世界をとらえたいと思いました。たとえばパリの国立科学研究所を取材しましたが、ここでは南極の氷河を研究しています。厚さ3,200mにもなる氷河の中には地球の過去の空気が閉じ込められていて、80万年前まで遡れるのですが、これを分析すると地球が現在より暑い時期や氷河期を繰り返してきたことがわかります。温暖化の危機を単純に訴えるのではなく、地球をひとつの生き物のようにとらえ、地球がまさに生きている様子、その美しさやバランス力を見せることで、現在地球がどのような状態なのか、どうあるべきなのか、どう接していくべきなのか、世界遺産を通して感じていただきたいと思います。
ヒマラヤ、エベレストの周辺。マントルが大陸プレートを衝突させ世界の屋根を作った。いまも年に数ミリの割合で山の高さは変わり続けていると言われる。©TBS「世界遺産」 ※写真はクリックで拡大 |
どのような世界遺産が登場するのですか?
高城ディレクター:
第1週の「火山」はギリシアのアクロポリスからはじまります。アクロポリスの神殿が建ったのは、そこに大理石という石材があったからです。マグマを抱えた地球だからこそできあがった石材が大理石で、それが地表近くに運ばれてきたからこそアクロポリスができあがりました。第2週の「氷河」のオープニングでは、ニューヨークの自由の女神とセントラルパークが登場します。公園内には迷子石という巨大な石がゴロゴロ転がっていますが、都会のど真ん中にあるのはとても不思議です。これは氷河の置き土産。かつてこの場所が氷河に覆われていて、その活動によってあんなに大きな石が運ばれました。現在私たちが暮らしている地球の環境や、人類の文明の礎として、これらを各週の頭に持ってきました。ほかにはストロンボリ火山、イエローストーン国立公園、エベレスト、パタゴニア、キリマンジャロ、ユングフラウなどが登場します。
ガイド:
今回はじめて登場する世界遺産はありますか?
高城ディレクター:
2007年に登録されたばかりの韓国の世界遺産「済州(チェジュ)火山島と溶岩洞窟群」です。これは世界中で見られる鍾乳洞とは違って、溶岩が地下を流れたあとに残された空洞が洞窟となったいわゆる溶岩洞窟で、これまでに例のない自然遺産ではないでしょうか。
エクアドル、ガラパゴス諸島も火山活動が造った。島々の周辺の海底では地球内部のガスが放出され続けている。©TBS「世界遺産」 ※写真はクリックで拡大 |
いちばん見てもらいたいのはどんなところですか?
高城ディレクター:
毎週の番組では一つひとつの世界遺産の魅力を紹介しています。しかし、地球の大気を分けることができないように、地球はひとつにつながっています。世界遺産も同様で、その一つひとつが密接に関係しているのはもちろん、自分が住んでいるその場所さえも自然の一部としてつながっています。火山と氷河をテーマに世界遺産をつなぐことでそんな地球の素顔を見て身近に感じていただいて、それが地球の過去を知り、人類の未来を見つめることにつながってほしい、そう思っています。
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