子どもの健康より、成績をとったのが間違いの元
一郎君のケースでは、一見すると受験のための勉強がうつ病の原因のように思われますが、実際にはどうもそうではないようです。「何が何でもA高校に合格」という親の過剰な期待が、一郎君に相当なプレッシャーを与えていて、次第にそのプレッシャーに押しつぶされてしまったのです。
実際、一郎君自身、夏休みに成績が下がったことに危機感を持っていて、このままではA高校は無理かもしれないと感じていたようです。しかし、親からは「勉強が足りない。もっと勉強しろ」と言われる始末。
それからというもの両親からのプレッシャーはますます強くなっていき、遂には「このままではダメだ」と思った両親が、家庭で夜中まで勉強させるという強硬手段を取ることになりました。結果的にこれが、一郎君を精神的に追いつめることにつながってしまったのです。
このケースで問題なのは、「何が何でもA高校」という過剰な期待を子どもに押しつけてしまった点、そして最後には「親が子どもの健康よりも、成績をとってしまった点」にあると言えます。
受験に親の見栄は要らない!
わが子の成功を願わない親はいないでしょう。しかし、志望校に合格することだけがすべてではありません。ましてや合格するために、健康まで害してしまっては元も子もありません。幸いにも、一郎君はなんとか滑り止めのB高校に合格しました。もし問題に気づくのが遅かったら、A高校はおろかB高校にも合格できなかったことでしょう。
このケースから学ぶ教訓としては、「受験では親の見栄は要らない」ということです。小学校受験などのお受験とは違い、高校受験では親は裏方に徹することが原則です。学校でも塾でも勉強漬けの子どもにとって、家庭こそが「安らぎ」や「息抜き」の場となるよう心がけたいですね。