最北の街、稚内からさらにフェリーで2時間弱揺られた先にあるこの2つの島の名前は利尻(りしり)島と礼文(れぶん)島。
まさに「さいはて」という言葉がふさわしい利尻島と礼文島ですが、短い夏のシーズン中にはここにしかない美しい自然やおいしいものを求めて、たくさんの観光客やハイカーが訪れます。
旅を楽しむ人なら、ぜひ一度は行ってみたい「さいはて」の花の島、利尻と礼文をご紹介しましょう。
<目次>
- 高山植物が間近で見られる花の浮島/利尻・礼文
- 《利尻島》利尻富士がシンボルの丸い形の島
- 利尻富士が望める沼へ。湖面に映る利尻富士を見られるかも……
- 海を眺める絶景が充実
- 人面岩に寝熊の岩……不思議な形の奇岩も
- 利尻島で見られる珍しい花々
- 《礼文島》さいはてを実感できる日本最北の島
- 自然の造形に驚く桃岩、猫岩
- 高さ50mメートル、迫力の地蔵岩
- 日本最北の滝、礼文滝
- 眺望も美しい映画のロケ地、北のカナリアパーク
- 美しい弧を描く海岸線と青い海が望める澄海岬
- 最北限の地、スコトン岬
- 礼文島で見られる珍しい花々。特にレブンアツモリソウは必見!
- 利尻・礼文に来たら、絶対食べたい「生うに」!
- 利尻、礼文へのアクセス
高山植物が間近で見られる花の浮島/利尻・礼文
利尻島と礼文島は、稚内の西側に位置する有人の離島です。北緯45度を越える高緯度に位置するため、本州などでは標高2000メートルを越えるところにしか咲かない高山植物が平地で見られるのが利尻島と礼文島の特徴。島独特の固有種も存在します。
緯度の関係で夏が短い利尻島と礼文島ですが、夏の間に島のあちこちで高山植物が花開くことから「花の浮島」というキャッチフレーズで語られることも多いです。この後、それぞれの島の見どころを説明する中で、どんな花が楽しめるのかを紹介します。
《利尻島》利尻富士がシンボルの丸い形の島
さいはての島、利尻・礼文。まずは利尻島(Googleマップ)の紹介から。地名の由来はアイヌの言葉で「高い山のある島」を意味する「リイシリ」から。稚内から直線で約40キロ南西に位置する周囲63キロの丸い形をした島です。特産品でもある「利尻昆布」を知っている方も多いのではないでしょうか。 利尻島の中心には、海の名峰と呼ばれ、日本百名山にも選ばれている標高1721メートルの利尻岳(利尻山)がそびえます。「利尻富士」とも称される美しい山容は、見通しの良い日であれば、礼文島や稚内、サロベツ原野からも見ることが可能。まさに浮島という表現がぴったりです。
利尻富士が望める沼へ。湖面に映る利尻富士を見られるかも……
利尻島は島の中心に利尻富士が構えていることから、観光スポットは島の周囲に点在する形。道路も島を周回するものがメインですし、路線バスや観光バスも島をぐるっとまわります。利尻島は丸い形の島なので、アナログの時計に見立てて観光スポットの位置を説明していきます。ちなみにフェリーが発着する鴛泊(おしどまり、Googleマップ)は1時の位置です。 利尻富士を島内から見るスポットとして取り上げられるのは、鴛泊からほど近い姫沼(Googleマップ)と鬼脇地区のオタトマリ沼(5時の位置、Googleマップ)。
どちらも沼の周囲に散策路があり、姫沼では森林浴が、オタトマリ沼では花を見ながら散策を楽しむことができます。お天気に恵まれると湖面に映る利尻富士の姿も見られます。
海を眺める絶景が充実
利尻島内には、海を眺める絶景もたくさんそろいます。利尻島の玄関口である鴛泊港から見える突き出た岬はペシ岬。入港する時は利尻島に来たことを実感でき、出港する時は見送られるような形となる素敵な風景です。 鴛泊からほど近い姫沼展望台(Googleマップ)からは鴛泊港を見下ろせます。 仙法志御崎公園(6時の位置、Googleマップ)では、太古の昔に噴火した利尻富士の溶岩が流れてできた海岸を見ることが出来ます。 なお仙法志御崎公園では、夏季の間だけ稚内にあるノシャップ寒流水族館からアザラシが出張してきていて、かわいらしい姿を見ることができます。ちなみに野生のアザラシが見られることもあるとのこと。 仙法志から時計回りに進んで沓形との中間、8時の位置には、龍神の岩に弁天様を祀る北のいつくしま弁天宮があります。赤い鳥居と小さな祠があり、絵になるスポットですね。
人面岩に寝熊の岩……不思議な形の奇岩も
利尻富士から流れ出た溶岩は、不思議な奇岩を多数生み出しました。仙法志と沓形の中間、北のいつくしま弁天宮のすぐ近くに溶岩が作り出した奇岩、人面岩と寝熊の岩(Googleマップ)が海べりに見られます。 改めて言われると「なるほど……」と思うような形をしていますので、立ち寄って見てみることをおすすめします。
利尻島で見られる珍しい花々
「花の浮島」利尻島で見られる珍しい花々は、エゾキスゲ、チシマウスユキソウ、チシマゲンゲ、チシマフウロ、ミヤマオダマキ、ヒオウギアヤメなど多岐にわたります。 オタトマリ沼や仙法志御崎公園の周辺、9時の位置にあるカムイテラス(Googleマップ)や4時の位置にある利尻町郷土資料館(Googleマップ)などで珍しい花々に出会うことができます。その年の気候によって花の開花時期は大きく左右されますが、花が咲いている時期に訪れるのなら、ゆっくりと時間を取っておくといいでしょう。《礼文島》さいはてを実感できる日本最北の島
さいはての島、利尻・礼文。続いては礼文島(Googleマップ)へ渡ります。地名の由来はアイヌの言葉で「沖の島」を意味する「レプンシリ」から。稚内から直線で約50キロ西に位置する日本最北の島になります。
島の北側に礼文岳(標高490メートル)があり、東西8キロ、南北30キロという細長い島です。利尻島とは最短距離で8キロしか離れていません。
礼文島の魅力は、利尻島と同じく高山植物が身近で見られるということと、ダイナミックな海の風景が楽しめること。島の西海岸は、強い偏西風による荒波が作り出した断崖絶壁が続いており、ここでしか見られない風景を作り出しています。
自然の造形に驚く桃岩、猫岩
まずは礼文島の南側のスポットから。フェリーが発着する東海岸側の香深(かふか)から、新桃岩トンネルを抜けて西海岸側の元地へ向かう道の途中から左に曲がったところにあるのが桃台猫台(Googleマップ)という場所。 ここからは、桃のような独特の形をした桃岩が山側に、海側には猫の背中のような形をした猫岩を見ることが出来ます。どちらも不思議な形の岩なので、強く印象に残りますね。 猫岩の手前、左側に見える建物は桃岩荘ユースホステルです。ユースホステル宿泊者以外は、桃台猫台から猫岩を望む形になります。 また桃岩の近くへは、東海岸側にある桃岩登山口バス停からハイキングコースで登ることができます。登った先にある桃岩展望台(Googleマップ)からは、桃岩の展望だけでなく、利尻島・利尻富士の雄姿も見ることができますので、時間が取れればぜひ立ち寄ってみてください。高さ50mメートル、迫力の地蔵岩
元地から北側にある海岸は、メノウの原石が見つかったこともあるのでメノウ浜という別名があります。その海岸をさらに北に歩いていくと、海にそそり立つ大きな岩が見えてきます。 この岩は地蔵岩(Googleマップ)といい、高さ50メートルの巨大な岩です。その迫力には思わず息を飲んでしまいます。ただし現在は落石の危険防止のため、地蔵岩の案内標がある所までしか行けなくなってしまいました。また桃台猫台展望台からも、遠くになりますが地蔵岩の姿を望むことは可能です。
日本最北の滝、礼文滝
地蔵岩から海岸線を1.5キロほど歩いた先にある礼文滝(Googleマップ)。落差20メートルほどの小さな滝ですが、ここが日本で一番北にある滝です。以前は海岸線を歩いて訪れることができましたが、現在は高波や土砂崩落の危険があるため通れず、山側のトレッキングコースである礼文林道から大回りしないと行くことができない場所になってしまいました。
ロープを使って移動する場所があるなど上級者向けにはなりますが、滝へ向かう途中の花畑はとても美しいとのことなので、体力に自身のある方は礼文島に連泊して訪れるのも良いのではないでしょうか。
眺望も美しい映画のロケ地、北のカナリアパーク
礼文島の南端、知床地区の高台にある北のカナリアパーク(Googleマップ)。吉永小百合さん主演で2012年に公開された映画『北のカナリアたち』を制作する際に造られたロケセットが、映画制作後もそのまま残り、観光スポットとして公開されています。利尻島・利尻富士を望める高台に学校の分校をイメージした建物が造られました。建物内ではロケ当時を振り返る資料などが展示され、映画の世界に入り込むことが可能。近くにカフェも開設され、ゆっくりとした時間を過ごせるようになっています。 利尻島は海のすぐ向こうにありますが、海上の霧や利尻富士にかかる雲などが邪魔して、利尻富士がきれいに見える確率は高くありません。もし訪れた時に利尻富士の雄姿が見えた時は心ゆくまで絶景を堪能してください。
美しい弧を描く海岸線と青い海が望める澄海岬
続いては礼文島の北側のスポットへ。西海岸側の西上泊(にしうえんどまり)に澄海(すかい)岬(Googleマップ)というビュースポットがあります。 展望台に立つと、美しい弧を描く海岸線と、流れ込む海の色の美しさが記憶に強く残ります。 また展望台の南側では礼文島西海岸のダイナミックな地形を見通すことができます。雄大な風景が見られますので、こちらも忘れずに。最北限の地、スコトン岬
礼文島の一番北に位置するスコトン岬(Googleマップ)。岬の先端までいくと、向かいには無人島の海驢(とど)島を望むことが出来ます。天候に恵まれるとその先のサハリン(樺太)が望めることもあるとのこと。 スコトン岬の緯度は北緯45度27分51秒、稚内・宗谷岬の緯度は北緯45度31分22秒のため、地理上は宗谷岬が北にあります。ということで、スコトン岬は「最北限の地」としてアピールしていますが、それぞれの周囲の雰囲気を踏まえるとスコトン岬の方が「さいはてに来た!」と強く感じられますね。
礼文島で見られる珍しい花々。特にレブンアツモリソウは必見!
「花の浮島」礼文島で見られる珍しい花々は、利尻島と同じくチシマフウロ、ミヤマオダマキ、オオハナウド、エゾカンゾウなど多岐にわたります。 特に礼文島でしか見ることができない固有種があり、その中の一つがレブンアツモリソウです。ランの一種でアツモリソウという花の変種。乱獲などで数が激減して絶滅のおそれがあることから特定国内野生動植物種に指定され、礼文島北部の群生地(Googleマップ)で手厚く保護を受けています。 群生地はレブンアツモリソウが薄い黄色の花を咲かせる5月下旬から6月下旬のみ一般公開され、観光客でも花が咲く姿を見ることができます。不思議な形の花が印象に残りますね。レブンアツモリソウ以外の花は、先に紹介した澄海岬やスコトン岬、桃台猫台などで出会うことができます。その年の気候によって花の開花時期は大きく左右されますので、花が咲いている時に島へ渡れた時はゆっくりと時間を取るプランとすることをおすすめします。
利尻・礼文に来たら、絶対食べたい「生うに」!
利尻・礼文まで来たら、やはり生うには食べてみたいもの。島内の食堂であれば、食べられる所は多いようです。季節ものなので時価での提供になるお店もありますが、本州などの内地で食べるうにとは全く食感が違いますので、利尻・礼文を訪れたら、ぜひ食べてみて下さい。 また島内ではウニを採って殻をむき、その場で食べる体験ができる観光スポットもあります。産地だからこそできる体験ですので、興味がある方はぜひチャレンジしてみてください。
利尻、礼文へのアクセス
■稚内から利尻島、礼文島へ渡るハートランドフェリー 魅力たっぷりの利尻、礼文へのアクセスですが、稚内港からハートランドフェリーに乗船する方法が一般的です。 夏季は稚内から利尻島・鴛泊へ1日3便、礼文島・香深へ1日3便運航。利尻島-礼文島間の区間運行便も1日3便運航があります。早朝出発という条件でフェリーと利尻島及び礼文島の定期観光バスを乗り継ぐと、あわただしい工程にはなりますが、稚内から日帰りで利尻島と礼文島の両方を見回ることも可能です。
■飛行機で利尻島へ
札幌・丘珠空港から利尻島・利尻空港への日本航空(北海道エアシステム)の直行便が毎日1~2便運航。また6月から9月限定で、新千歳空港から利尻島・利尻空港までの全日空の直行便が1往復運航されます。利尻空港から鴛泊までバスで約15分かかります。
■稚内へのアクセス
<飛行機> 稚内空港へ、全日空の直行便が羽田空港から2往復、新千歳空港から2往復運航しています。稚内空港から稚内市内行き空港連絡バスに乗ると、フェリーターミナルへ直行することができます。
<鉄道> 稚内駅へ、札幌からJR北海道 特急「宗谷」が1往復、旭川から特急「サロベツ」が2往復運行しています。札幌から約5時間10分、稚内から約3時間40分。 稚内駅からフェリーターミナルまでは徒歩約15分です。
<高速バス> 札幌と稚内を結ぶ都市間高速バス「わっかない号」(宗谷バス・北都交通の共同運行)が昼行便5往復、夜行便1往復運行。札幌から約5時間50分。一部の便はフェリーターミナル発着となります。
■利尻島内・礼文島内の交通手段 島内の移動手段として、利尻、礼文共に宗谷バスが路線バスを運行しています。
ただし利尻島では島を一周する路線が1日5本の運行、礼文島では香深港からスコトン、元地、桃岩展望台、知床方面への各路線があるものの、それぞれ1日3~6本の運行と観光に利用するには使いづらいです。 利尻島・礼文島を初めて訪れる時は、夏季期間中1日2本運行される定期観光バスを使って観光スポットを効率的に回ってみることをおすすめします。また島内にはレンタカーの営業所もありますので、レンタカーを借りることも可能です。
思い立って行くには、かなり遠い利尻、礼文ではありますが、島ならではの手つかずの自然があちこち残っているとても貴重な場所です。これから短い夏の季節を迎える利尻、礼文へぜひ出かけてみてください。
【関連サイト】
◇「夏の名所」に「名所・旧跡」ガイドで夏の名所・旧跡を紹介した記事の一覧をまとめてあります。
◇「北海道の名所・旧跡」に「名所・旧跡」ガイドで北海道の名所・旧跡を紹介した記事の一覧をまとめてあります。