ビールは「飲むパン」

ドイツビール
修道院が設立した醸造所が今でも多く残っていて、ビールのラベルには修道士の絵がよく描かれている
中世の時代、ドイツの多くの修道院でビールが醸造されていました。規律の厳しそうな修道院と、嗜好品であるビール。どうも結び付かないような気がしますが、当時の人たちにとってビールは嗜好品ではなく、栄養価の高い重要な飲み物だったのです。現代のような豊かな食生活とは程遠い、中世の質素な食生活。とりわけ修道士たちは、農作業などの日々の肉体労働や厳格な生活の中、体が必要とする栄養を少しでも多くとることが必要でした。

毎年春にある「復活祭」前の40日間は断食を行う期間で、特にこの間はどのように栄養を摂取するか、ということが非常に重要な課題でした。そこで、“断食とは食べることを禁じているのであって、液体状のものを口にする行為は断食を破ることにはならない”という見解で、修道士たちは麦からできた液体=ビールをせっせと飲んでいたといいます。これで断食期間も、同じく麦からできているパンを食べるように、栄養をとることができたという訳ですね。

ドイツビール
「強いビール」の一種。麦芽の味が強めで濃厚な味 (c)Bayerischer Brauerbund e. V.
ビールを「液体状のパン」として日々飲んでいた修道士たち。想像すると、それだけで何とも面白い光景ですが、彼らが一日に飲むことを許されていたビールの量は、なんと5リットル! しかも17世紀前半ごろからは、断食時には「さらに栄養価の高いビールを」ということで、アルコール度数が普通より高めのものが造られていたのです。強いビールを毎日何リットルもガブガブ飲んでいたドイツの修道士たち(しかも空きっ腹に……)。みんな酔っ払っていた、ということですよね、きっと(笑)。

この断食のときに強いビールを飲むという習慣は、バイエルン地方に今でもしっかり残っています。毎年3月には「強いビールの季節(Starkbierzeit)」として、各ビアホール、ドイツ料理レストランでアルコール度数の高い特別ビールを飲むことができます。


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