「夫婦別寝」の広がり:夫婦の寝室事情を探る

夫婦の寝室事情:いつまでも一緒なのが理想だけど……

いつまでも一緒なのが理想だけど……

ここ数年、「夫婦別寝」という言葉を頻繁に見かけるようになってきました。特に、団塊世代のリタイアによって新しく増えたシニア層へのマーケットが拡大しており、住宅業界では、この言葉をキーワードに60歳代への住宅リフォームの提案を進めているようです。

しかし、夫婦別寝現象は、何もシニアに限ったことではありません。20代、30代にも広がる別寝は、結婚の意味そのものにも関わってくる場合があります。そこで今回は広がりを見せる「夫婦別寝」について、考えてみましょう。

<目次>  

【夫婦の寝室事情】シニア世代の夫婦は特に多い傾向が

夫婦別寝で自分のプライベートな時間を確保

夫婦別寝で自分のプライベートな時間を確保

■年齢が上がるにつれ、夫婦別寝の割合が上昇
東京ガス都市生活研究所が、2008年に20歳以上の既婚男女1432名に対して行った調査によると、夫婦別寝のスタイルは、年代が上がるにつれて増えていきます。「夫婦が別室で就寝」と回答したのは、
  • 70歳以上で47.4%
  • 60代で35.9%
  • 50代で32.3%
  • 40代で24.6%
  • 30代で14%
という結果となりました。夫婦間でのセックスがほぼ「卒業」になる方が多く、定年を迎え日中もずっと一緒にいる60代以上の夫婦に夫婦別寝が広がるというのは、容易に理解できます。

上記調査でも、50歳以上で夫婦別寝をしている206人の男女に(別寝になった)現在の寝室の意味を聞いたところ、「寝るだけでなくくつろいだり趣味などを行うための部屋」という回答が、男性で69.9%、女性で58.3%を占めました。

■夫婦別寝の原点は個室ニーズ?
つまり別寝にする大きな理由は「個室が欲しい」というニーズで、それが子供の独立などをきっかけに空き部屋ができたタイミングにあわせ、それぞれの個室を作り、そこにベッドを置き……という背景が見えてきます。

しかし、この調査でさらに興味深い点は、「個室があれば、寝室は夫婦一緒でもいいか?」というと、そうでない点です。50歳以上の夫婦別寝者に「理想の寝室」を聞いたところ「別々の個室を持つが就寝は同室」を選択したのは男性で20.4%、女性はわずか2.9%。圧倒的に「個室を持ったら夫婦一緒に寝るのはイヤ!」という方が多いのです。

一件単なる個室願望とも見えるシニアの「夫婦別寝」が、熟年離婚も多い、この世代の夫婦関係の冷め具合を表しているのかもしれません。本来なら、子供も巣立って、夫婦水入らずに戻るはずのこの時期。そこで夫婦がお互いに向き合うのか、あるいはパートナーではなく、自分自身や外の方に目が向くのか。そんな夫婦関係の差が、この結果に表れているような気がします。

もちろん、この調査では夫婦間のセックスと夫婦別寝の関係についての項目はないので推測になりますが、「個室があっても夫婦別寝がいい」という声の多さ、特に女性側からのこの声の多さに、この世代のセックスを含めた夫婦のスキンシップの乏しさを想像してしまうのは、私だけではないのでは?

【30代・40代の夫婦別寝】結婚後の生活スタイルの変化もひとつの原因?

添い寝が夫婦別寝のきっかけに……?

添い寝が夫婦別寝のきっかけに……?

■夫婦の寝室事情は、30代以降に大きな変化あり
東京ガス都市生活研究所のこの調査でさらに気になるのが、30代、40代の夫婦別寝。「夫婦が別室で就寝」が、40代で24.6%、30代で14%おり、「夫婦同室で別のベッドに寝ている」例と併せると40代の78.2%、30代の66.8%が「夫婦がくっつかないで」寝ていることになります。20代では54.8%と半数以上が「同室、同じベッド」で寝ているのと比べると、大きな変化が30代以降に起きていることがわかります。

■出産・育児による家族構成や生活スタイルの変化により、寝室にも変化が
もちろん、その理由は夫婦の愛情の変化だけでなく、出産、育児による家族構成や生活スタイルの変化があることが推測できます。住まいづくり研究所が、2006年に既婚女性505名に行った「夫婦の寝室」に関するアンケート調査によると、夫婦だけの世帯では「夫婦のみの寝室で就寝」が89%なのに対し、「夫婦+子供(第一子が未就学児)」の小さいお子さんを持つ家庭ではこの割合が14%に激減。「夫婦+子供が同室」が69%、「妻と子が同室、夫が別室」が15%になります。この時点で、「子供と添い寝をするから」と夫と寝室を分ける方が15%いるわけです。

その後、子供が大きくなり「夫婦+子供(第一子が7~12歳)」と添い寝が不要の時期になると、「夫婦+子供が同室」は43%に減りますが、「妻と子が同室、夫が別室」は16%とあまり変化を見せません。最初から夫婦別室を選んだ方は、子供が大きくなっても夫婦だけの寝室に戻らない傾向が見られます。

そして、さらに子供が成長し、「夫婦+子供(第一子が13歳以上)」と、逆に「子供部屋」が必要な頃になると、さすがに「妻と子が同室、夫が別室」は5%に、「夫婦+子供が同室」は8%に減ります。しかし今まで0%だった「夫婦別室」が24%に急増。この時点で、「夫婦のみの寝室」が62%に対し、「夫婦別室」が、「妻と子が同室」も合わせて29%にまで増えているのです。

■子育て後も、夫婦別寝から夫婦同室に戻らないケースも
出産前に9割だった「夫婦同室」が、子育てによる夫婦別寝を終えた後でも元には戻らず、3割はそのまま夫婦別寝に……。

添い寝という習慣が子育て中の夫婦を別寝にさせてしまうのは仕方がないとしても、子育てを終えても妻が別の寝室に行ってしまうという事実を見ると、親として一番充実している時期を過ぎ、夫婦のコミュニケーション力が問われるこの時期に夫婦の別寝が生まれ、それはシニアになればなるほど、一層増え、夫婦別寝が夫婦の亀裂の広がりと深い関係があることが推測できます。
 

「夫婦別寝」によって引き起こされるメリットを考える

パートナーのいびきにも慣れる努力が必要!?

パートナーのいびきにも慣れる努力が必要!?

もちろん、夫婦同寝が「善」で、夫婦別寝が「悪」だと単純に決めつけるわけにはいきません。
森 綾さんの書かれた『夫婦別寝の時代』(2009年、主婦と生活社)には、キャリアアップのためなど、目的のために夫婦別寝を行い、なおかつ夫婦円満でいる例が掲載されています。

しかし、本に掲載されているカップルは、夫婦仲を保つために、意識してコミュニケーションを厚くし、お互いの関係を弱めないように努力をしていました。また、20~30年以上連れ添った夫婦、定年後、日中ずっと一緒にいる夫婦が1人の時間を求めて別寝を選択するのも理解できます。

しかし、結婚してまだ間もないのに、子育てを理由に別寝を開始し、そのまま夫婦同寝に戻らないカップルは、少し注意が必要ではないかと思います。ただでさえ、現代において人と人のつながりは希薄です。小さいころから個性尊重の学校教育を受け、個室を与えられて育った、団塊ジュニアに当たる今の30代以下は、自分のスタイルを維持したいという傾向が強いといわれています。

世の中が豊かになり、TVやパソコンといった家電が人数分、トイレやクローゼットなどかつては家族共同で使っていたところも複数カ所に。さらには車も2台など、家の中で夫婦や家族で何かを共有したり、お互いに譲り合ったり、自分が我慢をしたり、ということが少なくなっていることも見逃せません。

また、長い勤務時間で、平日は夫婦で食事どころか顔を合わせることも少ないライフスタイルも影響があるでしょう。これらの環境と「プライベート尊重」「個性尊重」が、いつの間にかパートナーへの歩み寄りを忘れた姿勢にはなっていませんでしょうか?

以前、『婚活時代』(2008年、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者・白河桃子さんと対談した際にも、「自分のライフスタイルを変えたくない」という理由で結婚しない若者がいることが話題になりました。異なる個性が一緒に生活する「結婚」には様々なカルチャーギャップがつきものです。それに対して理解や妥協、譲歩、受容がないようでは、強い夫婦の関係を築くことはできません。

夫婦が同じ寝室で、一緒のベッドで寝れば、消灯時間も気にしないといけないですし、寝返りをうてば相手にぶつかるかもしれません。エアコンの設定温度でもめることもあれば、いびきがうるさくてストレスになり眠れない、というのもあるでしょう。喧嘩の原因にもなり得ます。

しかし、そんな不自由を全部切り捨て、自分好みの空間にこもって日々を過ごすのでは、パートナーへの愛情も理解も深まらないのではないでしょうか? ただでさえ、夫婦が一緒にいる時間が少ない働き盛りの夫婦が、寝室まで分けてしまったら、2人はいつコミュニケーションをとるのでしょう。もっと寝室を有効に活用できれば、夫婦の愛を高めることができると思いませんか?
 

寝室「ラブホ化」のすすめ 睡眠以外の楽しみをプラスする

夫婦の寝室「ラブホ化」で楽しみましょう

夫婦の寝室「ラブホ化」で楽しみましょう

「寝室プロデューサー」を名乗る私としては、寝室を夫婦生活の中心と考えております。夫婦同寝は円満な夫婦関係に不可欠。そのためには寝室のエンタメ化を強くおすすめしたいと思います。

寝室は睡眠をとる部屋だと思わず、大人の男女が遊んだり、癒されたり、もちろんセックスもしたり、極端に言えばラブホ化してしまうのです。冷蔵庫や電子レンジ、TV、ゲーム機、DVDプレーヤー、マッサージ機、ソファーや書棚、手元を照らせる照明、ダーツやカラオケなんかがあってもいいかもしれません。

もちろん、眠りたいときにはぐっすり眠れるように遮光・遮音の工夫も必要でしょう。寝室を夫婦の「居間」と位置付け、そして、そこは子供NGの空間としてはっきり分けることも大切です。それによって、子供抜きで夫婦で楽しむ時間が少しでも確保でき、きっと夫婦の絆も深まると思います。ぜひ、皆様のお宅の「寝室ラブホ化」をご検討くださいね!
 
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