社員が仕事のミスを自腹で補う?責任を負うべきなのか

社員は仕事のミスを自腹で補うべきなのか

社員は仕事のミスを自腹で補うべきなのか


仕事上でミスすることは誰でもありえます。そんなとき、いつも従業員が責任をとらされるのではたまりませんね。今回はそんなケースを題材にしました。
 

事例:取引先の倒産で売掛金が回収不能に!

私が担当していた取引先が倒産してしまったため、会社の売掛金の回収ができなくなりました。上司からは、私が取引先の倒産を見抜けなかったのが原因だということで、回収できなくなった売掛金相当額を全額賠償しろと言われています。もし払えない場合には、毎月、給料から天引きするとも言われています。仕方ないのでしょうか?
 

仕事上ミスをした場合の損害賠償はある程度制限される!

人間はコンピュータではありませんから、どんなにまじめに働いていても、仕事でミスをしてしまうことがあります。つり銭を払いすぎてしまった、飲食店で食器を割ってしまった、あるいは、営業車を運転中に交通事故を起こしてしまったなど、さまざまです。

このような場合に、会社の損害をすべて従業員が賠償しなければならないとしたらとても不公平です。なぜなら、会社は従業員を使用して利益を上げている以上、従業員のミスによるリスクも負担するべきだからです。そのため、従業員が仕事上ミスをした場合の損害賠償は、過去の裁判例を見ても、ある程度制限されています。
 

損害賠償が発生するのは具体的にどんな場合か?

さて具体的に、従業員はどの程度、ミスによる損害を負担しなければならないのでしょうか?まず、従業員が仕事の過程において、通常求められる注意義務を尽くしている場合には、そもそも損害賠償責任は生じません。また、些細な不注意により損害が発生したとしても、そのような損害の発生が日常的に一定の確率で発生するような性質のものである場合には、やはり損害賠償する必要はありません。前に述べた「つり銭を多く渡してしまった」「食器を割ってしまった」などが典型例です。

以上とは異なり、従業員に重大な過失や故意がある場合には、損害賠償しなければなりません。会社のトラックを運転していて、スピードの出し過ぎにより交通事故を起こしたような場合や、ライバル会社に顧客情報を流してしまったような場合です。
 

損害賠償義務の従業員の負担割合

また、従業員が損害賠償義務を負う場合であっても、発生した損害の全てを負担しなければならないわけではありません。従業員の過失の程度や会社側の管理体制(従業員への指導教育が行き届いていたかや、保険をかけていたかどうかなど)、従業員に対する労働条件などを総合的に考慮して、損害の負担割合が決まります。

ただし、ミスとはいえないような窃盗、業務上横領などの犯罪行為については、原則として、それを犯した従業員が全額賠償しなければなりません。
 

損害賠償の給料からの天引きは許されない!

なお、会社が従業員に対し、損害賠償請求できる場合であったとしても、一方的に従業員の給料から天引きすることは禁止されています。
 

認識がなければ大丈夫!

以上のとおりですから、ご相談の件では、取引先の経営状態が悪いことを知っていて、もはや将来的に回収が不能であることを知りつつ、あえて商品を販売し続けたような場合でなければ、会社からの請求に応じる必要はありません。また、給料からの天引きは違法ですから、抗議するべきです。
 

まずは懲戒権を行使する

ところで、会社は従業員に対して、就業規則にしたがって懲戒権を行使することができます。ですから、会社は従業員が仕事でミスをした時は、まずは懲戒権の行使により、会社秩序の維持を図るべきであり、損害賠償の請求は、例外とするべきです。既に従業員に対する減給処分や降格処分がなされているのであれば、重ねて損害賠償することは認められない場合もあるでしょう。さて、あなたの会社は大丈夫でしたか?

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