箱根の初夏の風物といえば「あじさい」。
登山電車周辺をはじめ、箱根ガラスの森や芦ノ湖湖畔の遊歩道などで、心を鎮めると言われる紫や青のあじさいに出会えます。
そんな中でもガイドが大好きなスポットが阿弥陀寺。
ここを訪れるとあじさいの爽やかな色と琵琶の音、住職の美声に心洗われるのです。
箱根の穴場あじさいスポット・阿弥陀寺
箱根の阿弥陀寺、といってもあまり知らない方が多いかと思います。
箱根の玄関口、箱根登山電車の箱根湯本駅から徒歩30分。30分のうち20分は山道を登る登山ですし、湯本の温泉街や商店街とは逆の山の中にある静かなお寺です。
あじさいが咲き乱れる阿弥陀寺の境内。本堂は江戸時代の庄屋の住居を移築したもの |
幕末を生きた皇女・和宮は明治10年、箱根の塔ノ沢の温泉で亡くなります。
阿弥陀寺は32歳で亡くなった皇女の密葬を務め、その位牌を祀る由緒あるお寺なのです。
ひっそりとした寺の佇まいには、箱根の華やかな雰囲気はありませんが、一度訪ねると必ずやファンになってしまい、何度も訪ねてみたくなる場所です。
6月中旬から7月上旬にかけて、参道から本堂までの山道の両側には紫や青、白い清涼なあじさいが咲き乱れます。
その数3000株といわれますが、実はすべて、現住職・水野賢世和上が自ら手植えしたものなのです。
参道脇の木を切り倒し、あじさいの苗を植え、毎年、手塩にかけて育ててきたあじさい。
花を愛する住職が、30年あまりの歳月をかけてあじさいの寺に育て上げてきたのです。
あじさいや梅を植え、獣道に近い山道を車が通れる道に舗装し、訪れた人々に流麗な琵琶の音色を聞かせる水野住職。
「生きている人々のために尽くしたい」という信念が寺を復興させたといいます。
次ページではそんな住職のエピソードと阿弥陀寺で味わえる癒しのひとときをお届けします。