在留届の問題は山積み
出発前に住民票の転出を届け、現地に到着後に在留届を提出していても、在外選挙に投票するには、それだけでは不十分。出発前に住所が確定していても、現地に到着するまでは在留届を出すことはできません。日本帰国の際には現地で届出を行い、帰国後は自治体にも転入を届けなければなりません。インターネット以外の手段で在留届を提出していれば、変更届や帰国届もマニュアルでしか受け付けられず、急遽帰国した場合でも現地の大使館や領事館に郵送やFaxする方法でしか帰国届は受理されません。電子申請は、「各個人の責任と判断において行うようしてください。万一、何らかの障害によりあなたの不利益が生じても、当方では一切責任を負いかねます。 」という文言に同意しないと、届出ができません。
実際に、インターネットで電子届出を行い、受理された旨のメールを受け取ったにも関わらず、実際に登録されるまで半年かかったという人の話もネットで公開されています(⇒機能していない外務省の「ORRネット」)。「津波発生後9日経過しても自分のところには何も連絡はないが、ほかの日本人のところには安否確認の電話があり、『主だった人たち』のところには連絡をしているという話だった」というエピソードには、暗澹とした気持ちにさせられます。
今や海外在住者の人口は、地方の県や中規模都市丸ごとひとつの規模に匹敵し、もはや少数派として切り捨てることはできない状況です。利用しやすく、かつメリットのある有益なシステムを作ることが、提出率のアップ、ひいては迅速かつ的確な安全確保対策を実施することにつながることに外務省が気付いてもよさそうなものですけどね。
改革・改善への期待
以前、湾岸戦争で置き去りになり、他国のチャーター機に乗せてもらって避難した体験談を本人から直接聞いたことがあります。その当時の日本政府の無策ぶりと比較すると、世界のどこかで不幸な大事件や災害が起こるたび、外務省や在外公館の不手際が指摘されるとともに、まだまだ不十分ながら少しずつでもノウハウは積み上げられているのかもしれないとも思います。
昨年実施された外務省の組織改編では、領事移住部が「領事局」に格上げされ、「領事機能と危機管理の強化」が目標のひとつに掲げられました。「省員の意識改革」や「領事窓口サービスの改善」を公に謳っているからには、「問題あり」という危機感を持って、実現に向けての手段が講じられていると信じたいものです。
「うまく活用されていないから提出しない」「困ったときに何もしてくれない」という意見も分からないでもありません。それでも、日本政府が海外在住日本人の所在を知りえる方法は今のところ在留届だけです。義務であるからにはまず提出した上で、よりよい仕組みの実現を辛抱強く要望していくしかないのではないでしょうか。
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