山内さんが申し込んだ「FICT BASE 料理研修」というプログラムは、イタリアのホテル学校で伝統的なイタリア料理について学べる1ヵ月のプログラム。料理人としての経験がない人でもOKの基本研修だが、参加者の大半はプロだった。
「15名の参加者のうち、まったく料理界で仕事をしていなかったのは、わたしを含めて6人だけ。見るものすべてが新しくておもしろく、ノートを取ったり、写真を撮りまくったりしていたので、すごく優等生に見えていたみたいです。概論の授業はシェフの実績を持つ人にとっては、知ってることばかりでつまらなかったみたいですが(笑)、わたしは、本当に知りたいと思っていた内容を深く知ることができたので、とても満足しています。日本で講師の仕事をしはじめて、特に現地で学んだことが役立っていますね」
ホテル学校の授業はすべてイタリア人が行うが、通訳付き。料理の概論や食材に関する講義のほか、調理実習などが含まれる。
「実習では、5人ずつのグループに分かれて、前菜、プリモピアット、セコンドピアット、ドルチェのすべてをコースで作ります。担当ごとに分かれて作業をしたのですが、プロがうようよいたので、できないことや分からないことは、言葉の通じない先生よりも、クラスメートがよく教えてくれました(笑)。イタリア語の授業も合計15時間くらいあり、それを通じて、やっと挨拶ができ、辞書がひけるくらいのレヴェルになりました。」
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「夕食後は、同じ実習グループのメンバーと、毎回授業で渡されるイタリア語のレシピの翻訳をしたり、宿題を片づけたりしてから、近所のバールでビールを飲んでました。週末のうち1日は、レポートなどの宿題を片付けたり、洗濯をしたり。土曜には市場がたつので、食材を物色したり、ワインを買いに行ったりもしましたね。日曜は近くの街や湖に遊びに行ってました」
参加者の経験や目的、さらには実技的なレヴェルもバラバラ。それでも、足をひっぱりあうこともなく、アットホームな雰囲気で楽しく過ごせたのは、互いの目的を理解しあえていたためだろう。
「目的意識がはっきりしていないと、周りがルーズだったり、ハイレベルだったりすると、自分自身を見失ってしまうことがあるかと思います。わたしはその点、参加した内容に満足してますし、一緒に学んだ仲間との出会いは、何ものにもかえがたいものになりました」