山内さんも「今しかできないこと」をしたい!と思い立った人の一人。趣味で5年半通っていた料理教室で、料理の奥深さにハマり、そのうちに、机上で食べ物の企画をするのではなく、実際に自分の手を動かす料理を仕事にしていきたい、と考えるようになる。
「料理教室では、さまざまな分野の料理を学び、週末にはパン作りの講習にも通っていました。料理の勉強を本格的にすることを考えた時点では、フランス料理を勉強したいと思っていたのですが、イタリア旅行に行ってから、一気にイタリア料理の方に興味が移ってしまいました。素朴なものが本当においしかったことに感動したんです。人々の明るさや、やさしさにも好感を持ち、イタリアが大好きになりました」
この世界で、何か自分を磨いていくことはできないだろうか? 「食」を一生の仕事にしていくためには何をしたらよいのか? そう考え始めたときに、料理専門雑誌で、豚の解体を見る研修ツアーの記事を見つける。
授業で作った手打ちパスタ |
たとえ本人が留学を決めても、周りの理解を得られなければ、コトはなかなか進まない。その点、山内さんはどうだったのだろう。
「主人は大賛成してくれました。8年も会社でずっとカンズメになってたんだから、それぐらいの自由な時間の使い方はいいだろう、やりたいことがあって、環境が整ってるんだったら(危なくないなら)行ってこい、と。ただ、費用は自分で工面しなさい、と言われました」
山内さんが留学準備にかけた期間は約3ヵ月。イタリア語は、NHKのラジオ講座と市販の語学書を使って勉強したものの、出発時点ではほとんどしゃべれなかったらしい。
「かなりチャレンジャーな状態でした(笑)。動詞の活用も、ちゃんと理解できていなかったし、思いっきり原形でしゃべってました。でも、イタリア人はとても親切で、こちらが話そうとする姿勢を見せると、何とかして理解しよう、と根気強く対応してくれるんです。それにかなり救われていたと思います。あと、料理の実習中なんかは、さすがに間にモノや食材が入るので、言葉がある程度不自由でも、なんとかなるもんですね」