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「西遊記」ホントの話(3ページ目)

「西遊記」は中国の古典です。多くの人はドラマや絵本で親しんだだけで、物語の断片しか知らないのではないでしょうか?原作に書かれているホントの話をご紹介しましょう。

執筆者:望月 愛生

原作では、なかなか出会えない孫悟空と三蔵法師


物語の前半は、三蔵法師に出会う前の孫悟空の大暴れエピソード満載です。ただの石猿が仙術を会得し、天界に登り、そこでも大暴れ。
大暴れが過ぎてお釈迦様の怒りを買い、五行山に500年閉じ込められることとなります。山に閉じ込められて反省した孫悟空は、観音様に助けを請うのですが、観音様は反省しているならば後からくる三蔵法師の弟子になって天竺へお供しなさいと告げて去ります。そして、沙悟浄・猪八戒もそれぞれ別の場所で悪さをして、観音様に諭され、後でやってくる三蔵法師の弟子となることを約束します。

つまり孫悟空らは、自分達の思いつきで弟子入りしたのではなく、それぞれの罪を悔い改めるために観音様の指示で三蔵法師を待っていた…というのがホントの話です。

三蔵法師は完全無欠の高僧ではない?!


三蔵法師は、ドラマや京劇で女性が演じることが多いので女性だと誤解されがちなのですが、男性です。女性が演じることで「非常に美しい男性」という設定を活かし、妖怪である弟子3人とは対照的な非力さが際立ちますね。西遊記の登場人物・三蔵法師と孫悟空・猪八戒・沙悟浄

さて、その三蔵法師の前世はお釈迦様の二番弟子だったのですが、お釈迦様の教えに背いたため、罰として人間に転生させられました。観音様は、三蔵法師の前世を見抜いた上で、お経を取りに行く使命を与えたのです。意外にも、お師匠さんは前世でヤンチャだったんですね。

転生してからも、そのヤンチャさが少し残っているのか原作のお師匠さんは高僧にあるまじき言動をすることもあります。早とちりで孫悟空を破門したり、弟子の注意を聞かずに妖怪の罠にハマったりなど…。
しかし、そういう人間臭さがあるからこそ、我々も共感できるし心惹かれてしまうし、孫悟空達もお師匠さんを見捨てられないのでしょうね。

ちなみに、「三蔵」とは経・律・論に精通している僧侶に対する敬称です。経・律・論とはそれぞれお経の種類のことで、
経…お釈迦さまの教えをまとめたもの
律…戒律(規則)に関するもの
論…経と律に関する解説および研究論文
という意味があります。

一行は天竺までに八十の苦難に襲われるが…。


さて、そんなわけですから、三蔵法師一行にとっての「天竺行き」は修行だったのです。彼ら一行が行く先々で妖怪に襲われるのは、妖怪たちの間で「三蔵法師を食べると不老長寿の効き目が得られる」という噂が流れていたからなのですが、その噂の出所はどこだったのでしょう?
修行には苦難がつきもの。それなりの苦難に遭わなければ修行の意味がありません。ですからその不老長寿の噂を流したのは、お釈迦様かその周辺…?ホントの黒幕は誰でしょう…?

そんなご難続きの三蔵法師一行が無事に天竺にたどり着くまでにかかった時間は五千と四十日。受け取ったお経は五千と四十八巻。
というわけで、8日以内に一行を都へ帰してあげましょう…と帰り道は雲に乗せてもらえることになります。
ところが観音様が一行の出会ってきた苦難を数えたところ八十難だったので、あと1つ苦難を加えよう!とご丁寧に一行を河に落とします。
八十一(九×九)が仏門に帰する数字だということで…。
最後の最後までご難続きでお気の毒です。

感動のエンディングは…?


「西遊記」の魅力は、主人公チームの個性や人間関係、敵キャラクターの豊富さ、次々起こるアクシデントとそれを切り抜ける爽快さにあります。
登場人物も非常に大勢いますから、完全に映像化や舞台化するのは無理でしょう。映像や舞台に感動したら、ぜひ原作にも触れていろんなエピソードを楽しみ、大勢の登場人物に出会ってみてください。

そして、感動のエンディングは…あなた自身の目でお確かめください!


●画像提供:福本浩子さん
登場人物それぞれに、天竺へ行かなければならない事情を抱えていました。三蔵法師自身も…。
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