中国語/中国語アーカイブ

歌舞伎町案内人の中国語を読む!(2ページ目)

言葉と自分の感情をリンクさせる練習の一環として、中国映画を観るなどの方法がありますが、リアルな中国語がまざった日本語の本もあるのです。

執筆者:望月 愛生

日本語のなかにちりばめられたネイティブ中国語

中国人と中国語で会話してみたいけれど難しそう…、そう感じる人でも、もし日本語の上手な中国人が相手だとしたらどうでしょう?日本語と中国語ちゃんぽんでもOK!と言われたらリラックスして挑戦できそうではないですか?
この本は、まさにそんな本です。

李さんは日本語が堪能で、日記の文章もほとんどが日本語です。ですが随所に中国語がちりばめられています。まず基本として、日記の日付や中華料理の名前は中国語になっています。

また、中国人は、よく会話の中に故事成語や四字熟語をさり気なく取り入れてアクセントにしますが、李さんの日記にもしばしばそれが登場します。その日の出来事を照らし合わせて「これを中国語で言うならば●●だ」などという解説もよくありますが、辞書よりもよほどわかりやすく現実感があります。

日記の一番最初は、李さんが緑の帽子をかぶっている女性に「キミのその帽子、よくないよ」と話したという出来事なのですが、緑の帽子の意味を知っている人でも、ネイティブの口から語られる言葉を聞く(読む)とインパクトがあります。※望月も意味は知っていましたが中国人が実際に使うところは見たことがないので感動(?)でした。男性だけでなく、女性にとっても緑の帽子をかぶるのはよくないということをこの本で知りました。

刺激的な非日常の中で営まれる日常生活

この本は李さんという一人の在日中国人の日常生活が書かれている日記なのですが、その日常が我々の想像するものとはまったく違います。
なにしろ、舞台は世界でも有数の歓楽街、歌舞伎町。李さんが見聞きするものや遭遇する事件はヘタなドラマよりもドラマチック、まさに「事実は小説より奇なり」です。

歌舞伎町という街は、そこに集まる人々の様々な想いが絡み合い、不思議なパワーを放っていることが文面から伝わってきます。そして、その街で生きる李さん自身も非常にエネルギッシュで、ほとばしる感情もあまりにもストレートです。

ストレートな感情に裏打ちされた生々しい中国語

日記といえども、出版物である以上他人に読まれることが前提であるので、多少の読み物的脚色があったり、無難にまとめたりしているのだろう…と無意識のうちに思いながら読み進めていくと衝撃を受けます。

他人の視線をまったく意識していないかのような赤裸々な告白やストレートな感情の吐露にドキリとさせられ、その中にちりばめられている中国語は驚きや衝撃とともにずっしりと体の中に響いてきます。

辞書やテキストで知っていた言葉も、李さんの日記の中に登場することで2次元的文字だけの世界から飛び出し、実感を伴った生々しい表現として目の前に現れてきます。

ストレートな感情表現は、李さんが中国人だからなのか、個人的な性格なのか、それとも両者の相乗効果なのかは、わかりません。

また在日中国人としての李さんの目から見た日本への意見・提言も注目です。一日本人として賛成したり別の意見を言いたくなったり、いろいろ感情が動かされるでしょう。今まで気づかなかった、知らなかった日本の側面を李さんの目を通して見つめてみるのも、新鮮な気分になります。

中国語をまったく知らない人でも、ひとつの読み物として非常に面白い、読み応えのある本です。そしてこの日記は公式サイトのコーナーで継続中です。

本を読んだら感想を公式サイトへ中国語でメールを出してみるのもいいかもしれません。(もちろん、日本語でのメールも喜んで読んでくれるはずです)歌舞伎町に出かける機会があれば、運がよければ李さんに会うこともできるので、中国語でおしゃべりできるかもしれませんよ。

偶然にもバッタリお会いした時に李さんは「笑いたい時は笑うし、怒るときは思いっきり怒ってケンカもするよ。泣きたいときはたくさん泣く。泣くのはストレス解消で気持ちいいよ」とおっしゃっていました。その言葉通り、日記の中には李さんの喜怒哀楽がてんこ盛りです。

日本人はどちらかというと我慢することが美徳で、感情をあまりあらわにはしません。ですが、李さんの日記を読み、ご本人のオープンマインドで魅力的な素顔にほんの少し触れることで、「自分の心を正直に表現することは人生を味わいつくす方法のひとつかもしれない」と考えさせられました。


【こちらもどうぞ】
■歌舞伎町案内人李小牧氏の著作■
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