ついでだからMUMMを一杯
広大な瓶詰め工場の地下はカーヴが網の目のように広がり、壮大なダンジョンと化している。 |
シャンパンが発泡し熟成してゆく過程はすべて、年中気温が変わらず十分な湿度の保たれる地下のカーヴで行われる。このMUMMのカーヴは広い工場敷地の地下一杯に広がっており、総延長なんと25キロというとてつもないもの。
ぶるるっ、寒い地下のカーヴには長くて暗い、湿気た階段を降りて行く。バットや樽、シャンパンをくるくる回して発酵過程で均一に泡を回す回転台などが所狭しと詰め込まれている。 |
枝分かれした丸天井の洞窟には何万本あるのかも見当がつかないシャンパンボトルの山がぎっしり詰まっており、縦横に穴の開いた木の板にはまだ発酵中で盛んに泡立つボトルが職人の手によってくるくる回されるのを待っている。
こちらは人気のブリュット・ロゼ。マム・ド・クラマンよりは手軽に買えるので、わが家にもまだ手付かずの瓶がある。 |
しかも良いシャンパンを造るためには絶えず、少しずつビンを回転させ続けねばならない。安価なものは機械でも回せるが、高級品であればあるほど回し方もデリケートになり、リキュールにも良いものが使われるようになる。原酒のブレンドも高級品種ばかりで行なうか、中には特急畑の単一種だけで作るものまででてくる。これでは高くついて当たり前だ。フルートに注がれたシャンパンは、見た目だけではワインに炭酸ガスを吹き込んだものと区別が付かない。しかし、ひとたび口に含むと、まろやかさと滑らかさはもう段違い。きめこまやかな泡はあくまでやさしく、心地よいフルーティな香りが鼻腔一杯に広がる、至福のひと時を与えてくれるというわけだ。