ジフ・シュール・イヴェット周辺には広々とした敷地にクリームイエローの柔らかな質感を持った石壁がめぐらされ、瀟洒な屋敷が連なっている。
どこかの待合室でふと目にした雑誌の1ページにあった藤田嗣治のアトリエが公開されているとの記事。手がかりは最寄り駅のジフ・シュール・イヴェット(Gif-sur-Yvette)とヴィリエ・ル・バクル(Villiers-le Bacle)という地名のみ。ジフ・シュール・イヴェットといえば高級住宅街にして、国立科学研究所と修道院のある静かな町。さすがに藤田嗣治、豊かで美しいイル・ド・フランスを絵に描いたようなすばらしい所にアトリエを構えたんだな、ということで初夏のさわやかな気候の中、さっそくドライブがてらパリ郊外に車を走らせて見た。

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ヴィリエ・ル・バクルが見当たらない?


ヴィリエ・ル・バクルの役場前には大きなロータリー。中ほどにポンプ小屋だろうか、石の壁にスレート屋根の小さな建物が。周囲には商店とレストランが2~3軒、商売になるのかならぬのか、浮世離れした風情の静かなたたずまい。
近頃は便利になったもので、住所さえ分かっていればたいていの所はナビに打ち込むだけ、あとは音声ガイドまかせで楽々たどり着けてしまう。そんなわけで、藤田嗣治のアトリエに行くのもきっと簡単だろうとたかをくくっていたのだが、出発そうそう出鼻をくじかれてしまった。私のナビにはヴィリエ・ル・バクルが出てこなかったのだ。おかしいなと思いながら20万分の一の道路地図の索引を引いてみたが、やはり見当たらない、はて。

仕方がない、とにかくジフ・シュール・イヴェットに行けば何とかなるだろうということでN118を南下、サクレ(Saclay)のインターを降りて、トリッキーなフランスの立体交差システムに悪態をつきながら美しい木立を抜けてジフの駅前に到着した。

それにしてもジフの街並みの美しいこと。クリーム色のベースにクロームイエローと茶色の石をちりばめた石壁の塀と広々とした庭、瀟洒な館。きっと庭にはプールがあるのだろう。行き交う人々の多くは国立の科学研究所があるためか、研究者や学者風。豊富な初夏のつややかな緑が、周囲の落ち着きを一層際立たせている。