■お待たせ!さまざまなシモン・ビーズを味わう
工場からオフィスに向かう間には大きな居間があります。壁には暖炉がしつらえられブドウの小枝がちろちろ燃えています。そばに据えられた長いテーブルにはたくさんの赤白のワインが栓を抜かれ、やはりずらっと並んだグラスにさまざまな色や香りを競っています。
ちょうどパーティの最中に押しかけた?いえいえ、これもパトリックさんたちにとっては重要な作業工程。発酵の具合は?熟成は順調か?コルクの変質は無いのか?などなど品質管理がしっかりしていないと良いワインはできません。もっとも役得としてちょっぴり良い気分になったり、まったくワイン作りとは関係の無いお友達まで集まってほろ酔い気分を楽しんでいるのもご愛きょうです。
ご愛嬌ついでにわれわれもご相伴にあずかりました、いただきまーす。む、な、なんだこの深いコクとふんわりとしたえもいわれぬ香りは。うまい!ラベルを見ると、グランクリュ、ひょっとしてラッキーな時におじゃましたかも。
あれこれワイン作りのお話をうかがいつつすっかり楽しんでいると、ギヨムさんがこれをちょっと飲んでごらんと目の前にグラスを。中にはなにやら白濁したワインが。こうやって味を聞くんだと教わったとおり、舌をくぼませてワインを含み勢い良くすぼめた口から息を吸い込むと、しゅるしゅるという音と共に鼻腔いっぱいにフルーティな香りが広がります。
■さて今年のワインの出来は?
なんとこの濁ったワインはあの歴史的な酷暑、2003年の新酒だそうです。現在熟成中の、樽から抜いたフレッシュなワインはリンゴ酸が乳酸菌に分解され酸味がやわらぎ複雑な香り付けをする真っ最中。まだ若く堅いながらとっても魅力的な味わい。
やはり2003年はヴィンテージの年なんですねと知ったか知識で問いかけたところ、どうもなかなかそうとも言い切れないんだそうです。
「実はあれだけの暑さってのはブルゴーニュにとっては難しい年なんですね。もともと寒冷地に適したここのブドウには2003年は暑過ぎました。たしかに刈入れ前の雨や雹の被害は受けないけれど、ブドウがすっかり暑さにまいり、悲鳴をあげているのが良く分かりました。」とパトリックさん、チサさん。
なるほど日頃からブドウと対話し育て上げてこそのお話ですね。それでもヴィンテージなのかそうでないのかはともかくとってもおいしい良いワインの予感がするなと思っているとギヨムさんの力強い言葉。
「ブドウの状況を見ていつもの年より1ヶ月早く収穫しました。大丈夫、良いワインになります。」うーん、そうですよね、楽しみです!
(自慢の"作品"とともに写真に収まる、左側がパトリックさん、チサさんをはさんで右側がギヨムさん。)