蛇の道はモジャモジャだ!
『築15年館』308号室。フニワラ(妻)の現住の家から徒歩20分といったところでしょうか。駅のこっち側から向こう側に陸橋を越えて行きました。近くにはあまり活気のない商店街があり、活気のあった頃の名残でしょうか、郵便局や銀行の出張所、保育園などがすぐ近所にある、比較的便利そうな、でも静かな街並みです。『モジャモジャ不動産』の社員・蛇野さんは13時ちょうどにクルマでやってきました。フニワラ(妻)と会うのはこれで3度目です。
(蛇野氏)「いやー、遅くなってすいませんフニワラさん。待ちました?」
(フニワラ妻)「大丈夫ですよ、近所一周してましたから」
この瞬間、蛇野さんがチョット変な顔をしたのをフニワラ(妻)は見逃しませんでした。「?」
でもそんなこと気のせいだったかのように、蛇野さんは快活に話し出したのです。
(蛇野氏)「フニワラさんはこの辺、わりとお詳しいですか?」
(フニ妻)「いやー、詳しいわけじゃないですけど、たまに散歩で通ったりはしますねぇ」
(蛇野氏)「ほぉー……」
言いながらマンション裏手の駐車場から、外階段に回ってどんどん登っていきます。遅れじとついていくフニワラ(妻)。
(フニ妻)(あー、築15年だから、オートロックじゃないんだなぁ)
階段でもすぐに3階到着。ちょっと変わったポーチ付きの玄関前はやたら広々していますが、住人たちはこのスペースを有効活用すべく?小型の物置など置いていたりするようです。物置だけにモノが入っていればいいのですが、物置周辺一体までが物置化しているお宅が、隣でした。
(蛇野氏)「なかなかいい雰囲気でしょう? ここ、桜が咲くと凄いんですよ」
そう、そのポーチに覆いかぶさるように、ちょっと樹齢が行った感のある桜の木が、モジャモジャと大きな葉のついた枝を広げています。しーんとした街の静寂に、この葉が風に揺れる音だけが聞こえて、フニワラ(妻)、ちょっといいカモー……とか雰囲気負けしそう。
でもこの部屋、エレベーターが使えない位置にあるということが分かりました。北廊下のゲタ履き部分には共用のエレベーターがあるのですが、オシャレポーチ玄関住戸はカッコいいんですけれどノーエレベーターという代償が……。そんな思いを見透かしたように蛇野さん、その名にもある蛇に似た細い眼を怪しくキラッと光らせ(たかのようにフニワラ妻には見えた!)、
(蛇野氏)「フニワラさんはお若いから、3階ぐらいなんていうことはないでしょう?」
と言うのです……。ンガクク。
白いタイル壁は築年数を感じさせない美しさで、そのことを褒めたら、「大規模修繕をしたばかりだから、最高のタイミングですよ」と蛇野氏。「へぇそうですかー」なんて笑いながら、玄関の鍵を開きます。
すかさず屋内に入って、窓を開けて回る蛇野氏。
フニワラ(妻)は少し遅れて、誰に言うともなく「お邪魔しマース」と、部屋の中へ足を踏み入れるのでした。
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