1,200機以上の航空機をメンテナンス
航空機のMRO(メンテナンス、リペア、オーバーホール)を請け負う世界最大の民間航空エンジニアリングサービス会社──ルフトハンザテクニック。ハンブルグ国際空港に隣接する同社の本部工場に到着すると、広報部から出迎えてくれたのは部長のベルンド・ハベルさんとトーマス・ウェスファルさんです。まずはオフィスに案内され、ハベルさんから同社の概況やMROビジネスの現状などについて話を聞くことができました。
ハンブルグ国際空港に隣接するルフトハンザテクニック本部工場。 |
「ルフトハンザテクニックは昨年、創立50周年を迎えました」と、ハベルさんは説明します。「その長年にわたる経験とあらゆる機種をカバーしてきた実績から航空機の整備・修理依頼は年々増え、とくに1994年にグループの一翼を担う独立した会社になってからは従来の倍近い伸び率で成長を続けています」
成長の背景には、エアライン業界を取り巻く昨今の厳しい時代環境があるようです。景気の低迷とともに、航空界では相次いでローコストキャリアが台頭。各国のネットワークキャリアはローコストキャリアの格安運賃に対抗するため、一様に無理なコストダウンを強いられました。その結果、運航する航空機のメンテナンスも手薄にならざるを得なかった、という事実があります。
「どのエアラインもいま、限られた資金でどう安全を確保していくかといった重要課題に直面しています。しかしルフトハンザは、そうした厳しい時代の中でもMROを長い間ていねいに続け、その成果として豊富な経験・ノウハウと高い技術がルフトハンザテクニックに蓄積されました。MROサービスの契約を結んでいる航空機は現在、1,200機を超えますが、近年の顧客増は私たちの取り組みが世界的に高い評価を得ている証しだと自負しています」
日本の黒い機体もドック入り
機体メンテナンスのニーズが高まっているのは、メガキャリアだけではありません。1機2機の小型機で運航する小規模航空会社から、各国の新興ローコストキャリアまで、同社の顧客リストには現在570社以上が名を連ねています。
【左】広報部長のベルンド・ハベルさん。【右】現在570社以上と契約。 |
「自社メンテナンスが難しいローコストキャリアにとっては、整備をどこに委託するかはとくに重要な問題です。ルフトハンザテクニックはアメリカやアジアにも拠点を展開し、どの地域の航空会社のニーズにもスピーディに対応できる体制を築いてきました。市場が大きくなれば必要なパーツなども安く開発・製造できることから、非常にリーズナブルな価格でサービスを提供できます」とハベルさんは説明を続けます。「日本の黒い機体の整備もわれわれに任されていますよ」
ハベルさんの言う「日本の黒い機体」とは──そう、2006年3月の新北九州空港の開港とともに新規就航したスターフライヤーです。スターフライヤーは3機のエアバスA320で東京/北九州間を運航。このA320を、ルフトハンザは世界で最も多い300機以上を保有しています。同機種についても豊富な整備実績をもつルフトハンザテクニックに委託することで、高い安全性を確保したい。新規就航にかける関係者たちのそんな期待から、同社との契約が締結されました。
さて、事前の情報収集はこれくらいにして、さっそく実際の現場を歩いてみましょう。
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