“保安のプロ”を自認する米系エアラインと
温情的対処が目立つ日本のエアライン
あるアメリカ系エアラインに勤務するNさんが、私にこんな話をしていました。
「国内の移動でよく日本のエアラインを利用しますが、日本人乗務員の対応の甘さは目立ちますね。離陸時に携帯の電源を切る。座席の背もたれを戻す。いずれも当り前のことです。もしそれに従わない乗客がいれば、米国系エアラインのCAなら即座に注意しますよ。厳重にね。それで言うことを聞かないと、飛行機は絶対に出しません。CAには普段からそういう保安要員としてのトレーニングが徹底されているし、彼女らも“保安のプロ”としての誇りがあるから、態度も厳然としていますよ」
その点、日本人は温情的過ぎる──とNさんは言うのです。
トイレでの喫煙、携帯電話の使用、CAへのセクハラ行為などがいまも跡を絶たない。 |
《ケース、その1》
今年1月23日、中部空港発札幌行きのANA機内で、座席の安全ベルトを装着しなかった40代の男性客に機長がベルト装着の命令書を手渡した。が、男性はそれを無視。滑走路に向かっていた同機は駐機場に引き返して男性を降ろし、出発が約25分遅れた。その後、男性は航空法違反(安全阻害行為)の疑いで書類送検。
《ケース、その2》
今年2月24日、鹿児島発羽田行きのJAL機内で、30代の男性客が携帯電話を使用。CAの注意を無視して電子メールを打ち続け、CAに暴言を吐くなどしたため、機長の判断で同機は一度搭乗口までUターン。その後、男性が謝罪したため再び搭乗を許されたが、運航に約1時間の遅れが出た。
この2つの事件を比較してみると、前者の事例ではベルト非着用によるものとしては全国で初めて航空法違反容疑での摘発に至り、後者では航空会社側が「罰金や損害賠償の請求は考えてない」と温情的な態度を見せています。
これについて、秀島さんは次のように解説します。
「たまたま前者がANA、後者がJALであっただけで、概して言えるのは日本ではまだまだ対応が甘いということ。本来はどんな場合でも、機内での安全を阻害する行為だと判断したら厳しい態度で当たるべきなんです。それを、状況によって“見て見ないふり”をしてしまう。揉め事に巻き込まれるのは嫌だ、という乗務員の気持ちもわからないではありません。しかし、真のサービスとは何かを乗務員一人ひとりが真剣に考えてみてほしい。そうすれば、迷惑客への態度も自ずと厳しくなるはずですよ」
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