真っ青な空に飛行機が文字を“タイプ”
アメリカ東海岸で以前、思わぬ光景に遭遇した経験があります。街を歩いていたら、はるか前方に突然、数機の小型機が現れました。小型機は編隊飛行を繰り広げ、澄み切った青空にポツン、ポツンと白い点を残していきます。上空に描かれたのは、ある企業の50周年だか100周年だかを祝う記念の文字でした。
スカイタイピング──という言葉を、みなさんは聞いたことがありますか? ダイビング(-diving)ならぬ、空のタイピング(-typing)。その言葉どおり、小型機を使って上空に飛行機雲をドット(点)状に発生させ、大空をキャンバスに文字を“タイプ”していくという壮大な試みです。
日本で空を舞台(背景)にしたコマーシャル活動といえば、古くはセスナからチラシを撒いたり、空にアドバルーンを浮かべるというのが主流でした。製品名や企業名を表示した飛行船が上空をゆく姿もときどき見かけましたが、アメリカでは、早くからこのスカイタイピングが広告・宣伝に取り入れられてきました。
そのもとになったのが、小型機1機で飛行機雲を発生させ文字や絵を描く“スカイライティング”でした。始めたのは、アンディ・スティニスというパイロットです。アンディ・スティニスはその後、“ライティング”の質の向上や文字を描く時間の短縮化に取り組みます。そうして完成させたのが複数の飛行編隊でコンピュータ制御された白煙文字を描くスカイタイピング手法で、1949年にニューヨーク上空で実施した小型機9機を使っての実験では、かつての“ライディング”の17倍という早さでメッセージを描くことに成功しました。
スカイタイピングはビジネスとして着々とフィールドを拡大し、世界の空にメッセージを描き続けてきました。これまでにさまざまな事例が残されていますが、1984年のロサンゼルス五輪でのメッセージは、比較的多くの人の記憶に焼きついているようですね。そしてことしの夏、日本でも、全国各地の上空である壮大なイベントが繰り広げられることになりました。
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