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コクピットクルーたちの逸話集

多くの人が一度は憧れるエアラインパイロット。しかしその仕事には、「え?」と驚くような意外な一面も少なくありません。過去の取材・インタビューで知ったコクピットクルーたちの“逸話”を集めてみました。

執筆者:秋本 俊二

◇◆◇ パイロットはきれい好き ◇◆◇
空港で以前、旅客機の清掃作業現場を見学させてもらったことがあります。1週間程度のフライトを終えた機体を、作業員たちが手分けして洗っていました。そのうちの一人、コクピットの窓によじ登って必死に窓をこすっている若い作業員に声をかけると、彼は困った顔で言いました。「窓についた黒いシミがなかなか取れなくて……」

コクピットクルーから、窓のシミを完璧に取り除いておいてほしいと申し送りがあったそうです。小さなシミの一つや二つぐらい……と、そのときは思いました。しかしクルーが極端にきれい好きだったわけではなく、窓のシミ一つが、じつは航空機の操縦に重大な影響を及ぼすことがあるのです。

たとえばマッハ0.82(時速約900キロ)で飛んでいる場合、反対方向から同じ速度で別の旅客機が近づいてくると、相対時速は1,800キロになります。これは、秒速に換算すれば500メートル。パイロットの目で対向機に気づくのはせいぜい5、6キロ先まで近づいてからなので、発見してからすれ違うまでわずか10秒しかからない。それも、最初は雲間にぽつんとゴミのように見えるだけです。窓をよく拭いておかないと、それが窓のゴミなのか対向機なのか、区別がつかないのですね。

◇◆◇ コクピットクルーが飲酒運転? ◇◆◇
悲惨な墜落事故のニュースはあとを絶ちません。原因はさまざまですが、旅客機が海に落ちた場合、引き上げられたパイロットの血液中からかなりのアルコールが検出されることがごく希にあるそうです。

まさか、機長が飲酒運転? ──いいえ、そうではありません。墜落現場からすぐに遺体が上がった場合は問題ありませんが、発見まで日数が経過して汚染された水中に遺体が放置されると、血液中のアルコールが醗酵して濃度が急上昇するケースがあるのだそうです。同様な現象は、車が事故で河川などに落ちた場合にも起こるらしい。だから遺体からアルコールが検出されても、必ずしも飲酒運転とは限らないのです。

もっとも、日本人の国際線副操縦士が搭乗前に酒を飲み、ベトナム・ホーチミンから成田へ向かう便が7時間近くも遅れるというトラブルなども現実に起きていますが……。

◇◆◇ キャプテンが機内清掃を手伝うエアライン ◇◆◇
機長も機内清掃させられるエアラインがあるというのは本当ですか? 前に読者の方からそんな質問が寄せられましたが、はい、本当にあるんです。そのエアラインとは、“家族主義”経営で知られるアメリカのサウスウエスト航空。効率経営を旗印に新規参入し、急成長を遂げました。

その経営がどれくらい高効率なのか。たとえば飛行機が目的地の空港に到着してから折り返すまでの所用時間。日本のエアラインが50~60分前後、全米平均でも45分程度を要しているのに対し、サウスウエスト航空は15~20分で再び次の目的地に向かって飛び立ちます。そのため、CA(キャビンアテンダント)もポロシャツに短パン、スニーカーといった軽装でテキパキと動き回り、コクピットクルーも同じように機内清掃や荷物運びを手伝っている。現場はまるで戦場だそうですが、清掃を無理やり手伝わされているのではなく、社員たちが率先して働く様子はまるでイベントを楽しんでいるようだとか。ユニークなエアラインですね。
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