鳥を観察・研究することで「鳥の飛翔」から解放され
現代に通じる飛行機の概念を打ち立てた
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1849年には三葉翼と十字型尾翼を備えた「オールド・フライヤー号」が10歳の子供を乗せて丘の上から数メートルの距離を飛ぶことに成功し、その4年後には「ニュー・フライヤー1号」が御者を乗せて153メートルを飛行しています。人を乗せた飛行機が、人類史上初めて空を舞ったのです。
後にケイリーは「空気力学の父」と呼ばれるようになりますが、彼の理論づくりのベースになったのはやはり鳥の観察でした。英国ヨークシャーに貴族の子として生まれた彼は少年の頃から鳥の飛翔に強い興味と関心を抱き、鳥たちを見上げては、幼い頭でそのメカニズムを考え続けました。そしてある日、斜め上方向から風を受けて鳥が上昇飛行するのを見たとき、鳥の羽に生じる力を上に押し上げる力(揚力)と前に押し進める力(推力)に分離するという画期的な着想を得たのでした。
鳥の動きを誰よりも細かく観察することで、彼は「鳥の飛翔」から解放され、現代に通じる飛行機の概念をつくり上げました。どんな種類の鳥をケイリーが研究の対象にしていたかという詳しい記録は、残念ながら残っていません。きっと好奇心旺盛な彼のこと、頭上をゆくあらゆる鳥に思いを馳せていたに違いありません。
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