◆パイロット泣かせの空港
これはパイロットによって、意見は分かれるようですね。過去にインタビューなどでよく聞かされたのが、98年に廃港になった香港の啓徳空港の話。山側からの着陸の際は密集した住宅街の屋根すれすれに降下し、海側からは岩山ぎりぎりから回り込んでのアプローチが要求される。しかも1本しかない滑走路の発着頻度が過密で、着陸の緊張感は他の空港の比ではなかったと話すパイロットもいます。香港国際空港に移転して彼らはホッとしているようですが、私などは啓徳空港の記録を集めた写真サイトなどを見ると、どこか懐かしい気持ちでいっぱいになります。
「凍結して滑りやすい空港」というのも、パイロット泣かせのようです。たとえば『機長の700万マイル』(講談社)の中で、著者であり現役機長でもある田口美貴夫氏はモスクワのシャレメチェボ空港を着陸の難しさでは世界で1、2位を争う空港としてあげ、次のように述べています。
「滑走路が非常にすべりやすい。冬に凍ってしまったときは言うに及ばず、私はここで初めて見たけれど、滑走路を形づくるコンクリートのブロックに大きな砂利、というより小石が混ざっており、その表面が摩耗してつるつるになっているため、タイヤがすべってブレーキがききにくい」
ところで、4月から供用を開始した成田空港の2本目の滑走路を、“着陸が難しい”リストの一つに入れているパイロットもいるらしい。国土交通省が今年2月に世界の航空関係者に向けて発信した運航情報の中に、滑走路南側の民家や立ち木が描かれた「パイロットから見た空港」と題するイラストがあります。そのイラストを見て、あるパイロットは「民家や立ち木に車輪を引っかけそうで、不安な気持ちになる」ともらしたそうです。たしかに、こういう滑走路は世界の空港の中でも珍しいかも知れません。パイロットには、くれぐれも“安全操縦”を心がけてほしいものですね。
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