NASAが米ボーイング社および米マイクロ・クラフト社と協力して開発を進めるのは、X-43――通称ハイパーXと呼ばれる極超音速機です。

スクラムジェットは試作エンジンの風洞実験にはすでに成功しているものの、2001年6月にカリフォルニアで行われたテスト飛行は失敗に終わりました。実験に使用したハイパーXは、全長3.7メートルの無人機。母機から空中投下されたあと、固体ロケットブースターを使ってマッハ10まで加速する計画でしたが、ブースター点火直後に制御不能に陥り、地上からの司令で空中爆破されました。NASAでは現在、2002年に予定されている新たな実験に向け、失敗の原因究明に全力で取り組んでいます。いずれ課題をクリアし、実用化に一歩ずつ近づいていくでしょう。
ハイパーXのマッハ10という速度は、想像を絶するものです。ニューヨークからパリへ飛ぶのに、ジャンボ機で約7時間、コンコルドでも3時間45分かかっているのが、ハイパーXならわずか40分程度。地上で飛行音を聞いてあわてて頭上を仰いでも、すでに飛び去ったあとでおそらく機影を見ることはできません。朝、東京の自宅で朝食を取ってからロサンゼルスでの会議に出席し、夕方には帰宅して家族と食卓を囲む──そんな生活も決して夢ではないのです。