富士山の写真を上空から撮りたいと思う人は多いようです。けれども、飛行機は富士山にはあまり近づけません。とくに、空が晴れ渡った日には──。
なぜでしょうか?
晴れた富士には近づくな! という“合い言葉”が、パイロットの世界にはあります。かつて、英国BOACのB707型機が富士山麓で空中分解し墜落するという事故があったのは1966年3月。原因は──乱気流でした。
乱気流は、大気中に複雑な形で存在します。その一つが山岳波による乱気流。山脈や孤立峰に向かって強い気流が真横から当たると、風下の側に「山岳波」と呼ばれる波が生じます。大気が湿った状態であればロール雲や波状雲が発生し、雲の様子からその存在を知ることが可能です。しかし大気が乾燥しているときは要注意。肉眼で存在を知ることはできない。とくに富士山付近に発生する乱気流の恐ろしさはパイロットたちの間でも語り草なのです。
乱気流の発生する場所はほかにもあります。その代表的なものが、夏場に多く発生する積乱雲──いわゆる入道雲です。入道雲はちょっとやそっとでは飛行機の突入を許さない“空の立ち入り禁止区域”。遠くから眺めている限りは真夏の風物詩として風情豊かですが、パイロットたちは絶対に入道雲に近寄ろうとはしません。うっかり中に飛び込むと、強烈な上昇気流と下降気流にもみくちゃにされた上、雷に打たれて機体は空中分解してしまう──あるパイロットはそう話してくれました。
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