YouTubeとメディア企業がうまく融合する方法とは? |
Googleにデメリットはあるのか?
では、今回の買収によるデメリットはないのでしょうか?米国のIT起業家マーク・キューバン氏は、先週の時点から、今回の買収に否定的な意見を出していましたが、実際に買収が発表された後にも、自身のブログで「今回の買収はクレイジーだ」と明かしています。一番の問題は、やはり著作権の問題で、Googleが今後1度でも著作権侵害で問題をおこすようなことがあれば、多くの株主訴訟につながるのではないかと見ているようです。勿論、Googleが、その辺りについて何も考えずに買収をしたということはありえないと思いますが、今後、著作権に関して何らかの問題が起こった際、その時にどういった対応をするかによって、もしかしたら、Googleの今回の買収の本当の意図がわかるかもしれません。
次々とメディア企業との連携を図るYouTubeの死角とは?
GoogleがYouTubeの買収を発表した米国時間9日、YouTubeはUniversal Music Group(UMG)、Sony BMG Music Entertainment、CBSとの提携も発表しています。YouTubeは今年6月にはNBC Universalと、そして先月中旬にもWarner Music Groupとの連携も果たしていますが、今後はこれらの企業に所属するアーティストの楽曲やビデオ、テレビ番組をYouTubeに投稿することが可能、または可能になっています。今回の提携では、今までYouTubeに対して、批判的な意見の多かったUMGと提携したということが、今後の著作権侵害関連でYouTube、Google両者にとって、大きな影響がありそうですが、それぞれの企業との提携には、もう一つ、大きな意味があります。それは例えば、UMGとの提携では、UMGのコンテンツがYouTubeに違法な形で投稿された場合、UMGが新技術を利用して問題のコンテンツを除去することも可能になっています。それ以外の企業とも同様な、もしくは似たような契約をしており、今まで玉石混合状態だったYouTubeに一定の秩序が整いつつあるという点です。
ただ、一定の秩序が整うということは、いい、悪いは別として、YouTubeの人気の原因の一つである、ユーザーが主導となった、なんでもありの面白さがなくなってしまうという恐れもあります。つまり、YouTubeは、今後、メディア企業との提携により、著作権侵害に関する問題が減る可能性を得たと同時に、ユーザーにとってのYouTubeの大きな魅力を失ってしまう可能性も孕んでいるのです。
オンラインビデオ市場は次のステージへ
オンラインビデオ市場は、YouTubeの登場によって、いい意味でも、悪い意味でも、インターネットの世界において、無視できない存在となりました。YouTubeは、一説には、投稿されている動画の80%は、著作権で保護されている動画だといわれていますが、今回の買収によって、投稿に関する規制が厳しくなる可能性があります。現在でも、以前に比べると、著作権の問題のある動画は減少しているようです。これによって、YouTubeは一時的に人気が落ちてしまうかもしれません。しかし、以前、私が「テレビとネットの融合は既に活性化している」の中でも言及したように、ネット上のサービスは動画に限らず、ユーザーが主導となり、ユーザーが望むものを提供できなければ、そのサービスは衰退していくだけです。そうなれば、ユーザー、YouTubeだけでなく、メディア企業にとっても有望なプロモーションの場を失ってしまうことになってしまいます。
市場の60%を占めることになるYouTubeとGoogleVideoが、今後、この市場を今まで以上に大きな市場へと牽引していくためには、ユーザーが望むものとメディア企業が望むものの最大公約数となるサービスを確立する必要があります。そしてそのサービスが確立した時、それは、オンラインビデオ市場の一般的なモデルとなり、今まで以上の大きな人気を得ることになるでしょう。
今回の買収は、YouTube、そしてオンラインビデオ市場にとって、玉石混合の第一ステージを終え、一定の秩序を持ちつつ、ユーザー、メディア企業が共に作り上げていく第二ステージへと進化するためのターニングポイントになりそうです。しかし、もし、そういったサービスが確立しなかった時は、残念ながらYouTubeは衰退し、市場全体の規模も縮小したまま、第二ステージへの進化も、また遠のいてしまうでしょう。今後のYouTubeの動向にますます、目が離せなくなりそうです。