
日々疲れて部屋が荒れてしまうのは、限界まで戦っている証拠です。しかし、床のゴミ1つがあなたの心をむしばんでいるとしたら……?
環境整備コンサルタントの舛田光洋さんの著書『あなたの部屋は、あなた自身です。「人生」と「空間」の相関法則』では、筆者が提唱する「そうじ力」をもとに、人生を整えていくメソッドを解説。
今回は本書から一部を抜粋し、NY地下鉄の重犯罪を75%減らした「割れ窓理論」について紹介します。
小さな秩序の乱れが重犯罪につながる―割れ窓理論
「いくら掃除をしたからって、誰もが成功できるわけないでしょ」
「部屋が汚くたって、心は豊かでいられるはず」
こう思う人もいるでしょうか?
その場・空間とそこにいる人の生き方には、「相関の法則」がある
これは僕の清掃業での経験からの考えです。しかし、これにはエビデンスがあるのです。
「割れ窓理論」と呼ばれ、小さな秩序の乱れを放置すると、無秩序は地域全体に広がり、やがて重大な犯罪につながる―というものです。これを提唱したのは、政治学者のジェームズ・Q・ウィルソンと犯罪学者のジョージ・L・ケリングです。小さな秩序の乱れとは、たとえば「割れた窓」「落書き」「ゴミの放置」などです。
この割れ窓理論の元になったのは、スタンフォード大学の心理学者、フィリップ・ジンバルドー教授の実験でした。「高級住宅街に〝窓ガラスが割れている車〟を放置するとどうなるのか」というものです。
割れた窓ガラスの車は、車のドアをこじ開けられ、車内のハンドルなどの部品が盗られ、バッテリーやガソリン、しまいにはタイヤも盗られました。そして、1週間ほどで、スクラップ状態になったというのです。
高級住宅街であっても小さな秩序の乱れが、やがて車をスクラップ状態にすることがわかったのです。この理論を応用したのが、ニューヨークの地下鉄でした。1980年代以降、とても治安が悪くて有名だったのです。無賃乗車、ゴミの放置、落書き、強盗、最終的に殺人事件が起こるまでになっていました。
そこで、1994年以降、ニューヨークのルドルフ・ジュリアーニ市長と、ウィリアム・ブラットン警察本部長が政策に割れ窓理論を取り入れました。まず車両の壁を埋めていた落書きを消しました。車内を清潔に保ちました。無賃乗車を徹底的に取り締まり、結果的には、地下鉄と駅周辺で起こる重犯罪事件を75%も激減させました。
ゴミや違反の管理=監視アピールに効果
この法則にはさまざまな応用がなされています。たとえば「札幌すすきの」です。
小さな乱れ(駐車違反・ゴミ・暗がり)を放置せず改善・管理することで、「ここはきちんと監視されている地域/犯罪を起こしづらい地域」というメッセージを発信し、犯罪発生の機会を減らそうというアプローチが取られています。
また近年、割れ窓理論はアメリカで再び注目を集めています。
2020年代に入り、公共空間の秩序回復や安全性の向上を目的とした政策が、連邦・州レベルで進められています。たとえば2025年には、「アメリカの路上から犯罪と無秩序をなくす(Ending Crime and Disorderon Americaʼs Streets)」と題された「大統領令」が出され、公共空間における無秩序な状態や違法行為への対応を通じて、地域の安心感を回復する方針が示されています。
こうした取り組みは、「環境の乱れが、人々の意識や行動に影響を与える」という割れ窓理論の考え方と通じるものです。環境を整えることが、社会全体の秩序や安心感につながるという発想は、いま再び見直されています。
著者:舛田光洋(ますだ・みつひろ)
そうじ力研究家。環境整備コンサルタント。1969年、北海道むかわ町生まれ。清掃業を通し、「空間と人生の相関関係」や「環境整備による心の変化」に気づき、独自に研究後、人生哲学「そうじ力」を提唱する。「自己啓発としての掃除」に関する書籍の第一人者であり、著書には、累計50万部になった『夢をかなえる「そうじ力」』『「そうじ力」であなたが輝く!』(いずれも総合法令出版)からはじまり、ミリオンセラーになった『3日で運がよくなる「そうじ力」』(三笠書房)などがある。







