
震災時、車中泊や避難所での生活を余儀なくされることがあります。プライバシーの確保のしやすさや余震の不安といった理由から、車中泊は現実的な選択肢の1つです。
一方で、これまでの災害時の情報から、車中泊には健康面で見過ごされがちなリスクがあることも知られています。不幸な災害関連死を避けるために、過去のデータをもとに、車中泊で気を付けるべき点と、すぐに実践していただける予防法をお伝えします。非常時の命と健康を守ることにつなげていただければ幸いです。
データが示す車中泊によるエコノミークラス症候群のリスク
地震や豪雨などで車中泊や避難生活が続くとき、非常事態下では、自宅の状況や親族の安否、これからの生活への不安などから常に緊張・興奮状態が続きやすく、自分の体調の変化に気付きにくくなります。緊張状態が続くことで、不眠や胃腸の不調、倦怠感、月経不順、頭痛・めまいなどの自律神経失調の症状や、腰痛・膝痛などの症状に悩まされることも珍しくありません。
また、体力を温存しようと、なるべく動かないようにする方もいますが、狭い場所で動かないようにすることは、残念ながら危険な行為です。
車内や避難所などの窮屈な場所で眠り、運動量を極端に減らしてしまうと、下肢の血流に問題が生じやすくなります。同じ姿勢を続けることで下肢の静脈に血栓ができ、その血栓が肺に流れてしまうと、命にかかわる「エコノミークラス症候群」につながります。エコノミークラス症候群は、震災関連死の1つとして挙げられるほど、車中泊や避難生活中に多い症状です。
実際のデータからも、その深刻さが分かります。2016年に起こった熊本地震では、地震発生から2か月の間にエコノミークラス症候群により入院が必要となった方は県内で51人にのぼりました。当時、災害関連死と認定された223人のうち、少なくとも60人以上が車中泊を経験していたという報告もあります。
新潟大学による調査では、新潟県中越地震や東日本大震災の車中泊者のおよそ3割に、エコノミークラス症候群の発症原因となる足の静脈血栓が見つかったとされています。
エコノミークラス症候群の予防法……簡単にできる足踏み・腕振りも有効
エコノミークラス症候群は、特別な道具や広いスペースがなくても、以下のような予防法を実践できます。
- 可能な限り、十分な休息・睡眠をとる
- 水分補給をこまめに行う(成人の場合、可能であれば1時間にコップ1杯程度が目安。利尿作用のあるアルコールやカフェインが含まれる飲み物は避ける。経口補水液の備えがあると安心)
- 足踏み・腕振り、深呼吸、首や肩のストレッチなどで体を動かす
避難生活においてはトイレに行く回数を減らそうと、水分摂取をがまんしてしまうケースも多く報告されていますが、こまめな水分補給は非常に大切です。十分な飲料水の確保が難しい場合を除いて、意識して水分をとるようにしてください。そして高齢の方も含めて、ごく簡単な動作で構いませんので、なるべく体を動かすことが大切です。
大きな災害時は自身の体を気遣う余裕も失ってしまいがちですが、なるべくこまめに体を動かし、水分と休息を意識することが、心身を守ることにつながります。
さらに詳しく知りたい方は、「命に関わる『エコノミークラス症候群』の予防法」をあわせてご覧ください。







