
経団連が発表した2026年夏のボーナスの妥結状況(第1回集計)によると、平均妥結額は3年続けて最高額を更新、初の100万円超えとなった。だが、これはあくまで大手企業の話。帝国データバンクの調査によると、中小企業を含む民間企業の平均支給額は約47万円、30万~50万円未満が4割近くという結果が出ている。
中小企業庁が発表した2021年6月時点のデータによると、日本国内には337.5万社の企業が存在しており、その中で大企業は1万364社で全体の0.3%。一方、残りの約336.5万社が中小企業に該当し、全企業数の99.7%を占めている。世の中は圧倒的に中小企業が多いのだ。つまり、ボーナス100万円を出しているのは0.3パーセントの企業にすぎない。
職人の夫と、パートの私
「うちの夫は職人ですが、社会状況や流行などにけっこう左右されるんです。結婚した20年前はそれなりに収入もあったんですが、今は業界自体が縮小している。この夏のボーナスなんて20万円ですよ。平均の半額以下。私はパートですが、今年は10万円のボーナスが出ました。パートの平均年間ボーナス額が12万円だというから、けっこういい方ですよね。でも息子の塾の費用などを考えたら、全額もっていかれる感じ。今年の夏は、うちは旅行もできません」
チアキさん(43歳)はそう言う。14歳の息子はどうしても行きたい私立の高校があるようで、塾に通いながら必死に勉強している。そんな姿を見ているだけに、合格したら行かせてやりたい。お金がないから諦めろとは言えないと覚悟している。
「それでも去年までは、せめて一泊旅行くらいはしようと決めていたんです。下の娘はまだ7歳だから海に連れていってやりたくて。去年は私の実家が旅の援助をしてくれたんですが、秋に父が倒れて入院費もけっこうかかった。何かあると助けてくれていた母も『お父さんが倒れるとは思わなかった。もう助けられない、ごめんね』と。むしろこちらが助けなければいけない年代になったんだと痛感しました」
家計を見直したが
考えたら両親も70代。親はずっと頼りになる存在だと思っていたが、これからはそうはいかないんだと分かったことがショックだった。
「夫の両親は夫が20代のころに亡くなっているので、夫は『親を頼るな』と言っていました。でも私は甘かったんですね、夫には内緒で困ると親に泣きついていた」
だが現実に頼れないと分かってからは、家計や生活を見直した。ところが、どう考えても「無駄なお金は使っていない」としか思えない。子どもが二人いる家庭として、もともとの世帯収入が少ないのだ。それでも子どもたちの希望はできる限りかなえてやりたいと思っている。
「せつないですよね、こっちだって一生懸命働いているのに。世の中はなんて不平等なんだろうと思います」
ものを売ったり隙間バイトにいそしんだり
夫も彼女も、「収入を増やす方法を考えるしかない」と思うようになった。夫は月に数回、週末のアルバイトをするようになった。チアキさんは隙間バイトをしたり、家の中の不用品をせっせと売っている。
「どれも微々たる収入なんですが、いっさい使わないでためていくことにしています。娘はピアノを習っているんですが、家にはピアノがなくて。近所の人に話したら、余っているキーボードがあるという。譲ってほしいと言うと、うちの夫が趣味にしている盆栽と交換してもらえないかと。そのキーボード、けっこうな額なんですよ。夫は喜んで交換していました。もしかしたら盆栽、売れるかもねと今、話しているところです」
少しでも収入を得るため、支出を減らすためには何でもやるしかないと夫婦は腹を決めた。住んでいる自治体が募集している家庭菜園にも応募した。野菜を自分で作ればいくらかは節約になるはずだ。
「涙ぐましい努力を重ねていますよ。先日はちょっと実家に戻って、私が若いころにためたレコードや本なども持ってきました。なるべくいい値段で売ろうと思っています。子どもたちに気を遣わせないよう、夫婦で秘密にしながら頑張っていきます」
お金がなくても
夫も彼女も小遣いは1万円。夫にどうしても参加しなければいけない飲み会があるときは、参加費用だけを家からもっていく。ふだんはよけいなお金はもたないようにしているのだという。
「お金がない、だから何もできないというのではなく、お金がないけど夫婦で力を合わせて頑張ろうという方向にいけたのは、私たちにとってはよかったことですね。なんだか夫婦の関係が強くなったような気がするんです」
どう頑張っても収入が上がらないなら、他の方法で増やしていくしかない。たとえそれが微々たるものでも、「ちりも積もれば山となるという言葉を信じたい」とチアキさんは切実な表情でつぶやいた。
<参考>
・「2026年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況 第1回集計」(一般社団法人 日本経済団体連合会)
・「2026年夏季賞与の動向アンケート」(株式会社帝国データバンク)
・「中小企業の企業数・事業者数」(中小企業庁)







