
共働きで子どもを育てている夫婦だって、「自分の時間」は確保したいもの。話し合い、譲り合えればいいのだが、「こっそり自分の時間」をもちたい人もいるようだ。
「対等に」を心がけてきた
「結婚して子どもができたとき、当然のように共働きを選択しました。収入の多寡に差があるのは仕方ないけど、フルタイムで働くのは同じ。家事も子育ても対等にやっていこうと話し合ったんです」
ミドリさん(42歳)はそう言う。12年前に結婚した夫との間に、10歳と8歳の子がいる。どちらも両親や親戚は遠方にいるため、身内の援助は頼めず、ママ友や地域の制度を「使い倒しながら」頑張ってきた。
「ここ2年くらい、やっと時間的にも精神的にも余裕が出てきました。以前はせいぜい月に1回くらいしか飲み会などにも参加できなかったんですが、それも徐々に解禁、互いに自分の時間を作れるようにしていこうと」
夫はたまにしか出席できなかった趣味のフットサルを全面的に再開、ミドリさんは念願だった絵画教室に通うようになった。あるとき夫が「フットサル仲間と合宿することになったから、1泊で出かけてきていいかな」と言いだした。
フットサルをする夫を見に出掛けたら
「大好きな趣味なのだから、思い切ってやった方がいい、みんなで合宿も楽しそうだよねと送り出しました。年に2回くらいあるんだけどと言うから、いいよ、どうぞと。私は自分が子どもと離れたくないから泊まりでは出かけないけど、だからといって夫に行くなとは言いたくなかった」
この2年で4回ほど、夫はそうやって出かけていた。
夫が月に2回ほど、フットサルの練習をしている場所は自宅から遠かったこともあり、ミドリさんはその現場を見たことがなかった。ところがつい先日、フットサルに興味を抱いた下の子が、どうしても見たいと言い出した。
「じゃあ、行ってみようかと重い腰を上げました。上の子は近所の子と遊ぶというので、下の子だけ連れて」
夫は生き生きと動きまわり、楽しそうに練習していた。
仲間にお礼を言うと……
休憩に入ったとき、子どもが夫に手を振った。夫も気付いて驚いたように近寄ってきた。
「どうしても見たいというから連れてきた」と言うと、「おお、ゆっくり見ていって。お父さん、頑張るから」と夫もニコニコ。
「そこへお仲間が、『え、お子さん?』と近づいてきたので、いつもお世話になっておりますと型どおりのあいさつをしました。『また合宿、するんですか』となにげなく言うと、その方がきょとんとして。夫は慌てたように彼を連れて向こうへ行ってしまった。なんだかおかしいなと思いました」
そういえば夫は『合宿』から帰ってきても、内容についてはほとんど話さない。もともと写真を撮るタイプではないが、それでも写真の1枚くらいあっても不思議はないはず。いろいろ考えていくと、合宿ではなく浮気旅行なのではとミドリさんは疑った。
夫のうそが判明
その晩、ミドリさんは夫を問い詰めた。
「夫は『ごめん。一人旅だったんだ』って。とにかく一人になりたい、一人でぼうっとしたり、いろいろ考えたりしたかったんだと。じゃあ、一人で旅したいと言えばよかったのにと言ったら、『家庭から逃げたいのかと思われたくなかった』と。でも一人になりたいというのは、そういうことだよねとつい言ってしまいました。すると夫は『ほらね、そうなるでしょ。だから言いたくなかった。きみには一人になりたいと思う時間はないの?』と言われました。子どもたちが小さいころは、あー、うるさい、解放されたいと思ったけど、せいぜい1、2時間ですよ。夫に子どもたちを預けて、美容院に行ってカットして帰ってきたら、もうそれで十分。子どもたちが大きくなれば別だけど、今の段階で2日間も離れたくはない」
そう言うと、夫は「オレはダメなんだよ、一人の時間がないと家族と向き合えない」とつぶやいた。
半年に1回、2日間だけのこと。それはそれでいいと思う半面、「自分だけ逃げている」と夫を責める気持ちがやはり湧いてくる。
「いずれにしても黙っていたことが許せなかった。本当のことを言ってくれれば考える余地もあるけど、合宿だと思って気持ちよく送り出していたから裏切られたような気分になるんですよね。信用できないと思い、そう思うことがちょっとショックだった」
全面的に信頼してきたからこそ、些細なことでも「裏切り」と感じてしまうのかもしれない。夫が謝ったことで表面的には元に戻っているが、ミドリさんの心の根に刺さったトゲは、当分抜けそうにない。そろそろまた『合宿』の時期だ。夫がミドリさんの顔色をうかがっているのを、彼女はひしひしと感じている。







