
夏休みに入り、観光地はどこもにぎわいを見せ始めている。旅行会社JTBのレポートによると、2026年の夏休み期間に1泊以上の旅行に出掛ける日本人の総旅行者数は前年比5%減の7117万人と動向見通しを発表している。うち、国内旅行者は6900万人だという。旅にはさまざまなハプニングがつきものではあるが、あまり不快な思いをしたくないものだ。
フードコートで宴会中の高齢者グループ
「夏休みが始まってすぐの3連休、10歳の娘と初めての二人旅をしたんです。歴史に興味をいだいた娘が、ある場所を訪れたいと言いだして。新幹線で到着してすぐ、ランチをとろうと駅にあるフードコートへ。人出は多かったけどすぐに席を見つけて座ることができました」
その日は非常に暑かった。マリさん(40歳)はまず氷のたっぷり入った水を娘に与えた。娘は少し顔を赤くしていたので、熱中症気味だったのかもしれない。冷たい水を飲んでようやく人心地ついたようだった。
「このまま午後から動いていいものかどうか、少し考えました。だけどまずはおなかを満たさなければと、何を食べようか娘と考えていたんです。そのとき、2つくらい離れたテーブルからうわーっと大きな声が聞こえました」
見ると、60代以上くらいの男性8人ほどがテーブルを囲んで大声で話している。話しているというよりは、それぞれが勝手に叫んでいるような状況。よく見ると、テーブルの上にはかなりの数のビールや焼酎の缶が転がっていた。
「さらに誰かがお酒を買いに行くのか、おまえ買ってこいと言われた少し若めに見える人が立ち上がり、『ビールの人』と言うと、ハイハイと大きな声が上がる。『焼酎の人』というとまた、ハイハイと。さらに『おまえの金で買ってこいよ』だの『オレ、ロング缶』だのという言葉が大音量で行き交っていました」
ランチの時間なのにすでにできあがっている人も数人いて、立とうとして荷物をひっくり返したり、隣のテーブルにぶつかったりと、そこだけが宴会状態だった。
スタッフに注意してもらうよう頼んだが
「とにかくうるさいんですよ。娘もうんざりした顔をしている。体調を心配していたところだったから、ますます気になって。スタッフの方が通ったので、『なんとかしてもらえませんか』と頼みました。しばらくして責任者らしい人が出てきて、あまり大声を出さないよう注意したんです。すると『でかい声なんて出してねーよ』とまた口々に騒ぐ。だんだん腹が立ってきて、『うるさいですよ。迷惑してます!』と叫んでしまいました」
期せずして周りから、そうだそうだという声が上がった。マリさんに向かって拍手してくれる女性もいたという。さすがに彼らもまずいと思ったのか、ようやく出て行ってくれたそうだ。
「娘は急に元気になって、『ママ、かっこよかったよ』と。けっこう声が反響する場所だったから、あの大声に当てられて娘はげんなりしていたようでした。熱中症ではなかったみたいなのでほっとして、そこからいい旅ができました」
言うべきときには言うべきことを言わなければいけないとマリさんは痛感した。今回は娘のためだからできたのだが、勇気を出すことは必要だと感じたという。
お寺での体験中に
こちらも8歳の息子と一緒に、あるお寺の鐘つき体験に参加したダイキさん(47歳)。静謐なお寺の境内で、まずは僧の説法を聞く。ところが隣にいた年配女性5人グループは、まるで聞いていなかった。
「途中でお坊さんが『聞いてください』と言っているのに、知り合いのうわさ話や『この前、行ったお寺のお坊さんがイケメンでね』と関係ない話をしてはクスクス笑っている。何しに来たんだろうと思いましたね。せっかく来たのだから、ちゃんとお寺の謂れとか聞けばいいのに。楽しくない話であっても、来ることを選択したのは自分たちでしょと思いました。息子も時々彼女たちの方を振り返っていました」
それでも話が止まらないのが、集団心理というものなのだろうか。自分たちだけが「浮いている」という自覚はなさそうだった。
高齢者のマナー違反に
「鐘つき体験の注意事項もあったんですが、それもあまり聞いていないようでした。僕らはたまたま彼女たちと一緒に7人で体験することになってしまって。息子が引綱を持とうとすると女性に奪われたんです。お坊さんがちゃんと見ていて、『そこは彼に持たせて。あなたはこっち』と指示。綱を引くときまでしゃべっていて、お坊さんに怒られていました」
人は静謐な寺などに行くと、ごく自然と敬虔(けいけん)な気持ちになるもの。だがグループで行くと、そんな気持ちが失われてしまうのかもしれない。グループでの旅の楽しさは分かるけど、とダイキさんは眉間にしわを寄せた。
「年代の問題ではないと分かってはいるけど、手本を示すべき高齢者がルールを逸脱するのはシャレにならない。しゃべりたいだけなら、そんな体験をしなければいい。来たのならちゃんと礼節をわきまえてほしい。そんなふうに思いました」
息子にもそういう話をした。みんなでいるときは、ついはしゃいでしまうものだが、ときと場所をわきまえなさいと。息子も思うところがあったのだろう、深くうなずいたという。
<参考>
・「2026年夏休み(7月15日~8月31日)の旅行動向」(株式会社JTB)







