社会ニュース

「前職から170万減、介護のプロとおだてられても」美辞麗句に搾取される49歳“中年貧困”のリアル

前職から年収が170万円も激減し、困窮する49歳ヘルパー。身体を壊しても労災すら認められず、精神論ばかりを押し付けられる介護現場の残酷な待遇と、報われない労働の実態を詳しく紹介します。 ※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

重労働による身体へのダメージと低賃金に苦しむ介護ヘルパーの苦悩 ※画像:PIXTA
重労働による身体へのダメージと低賃金に苦しむ介護ヘルパーの苦悩 ※画像:PIXTA

「社会に不可欠」と称えられる「エッセンシャルワーカー」。だがその“美辞麗句”の裏側では、心身をすり減らし、生活すら危うい状況に追い込まれている人々がいる。

増田明利氏の著書『限界労働者 格差社会にあえぐ22人の生活』は、現代日本で深刻化する格差と、労働者たちの切実な叫びを浮き彫りにしたノンフィクションである。本書から一部を抜粋し、49歳の介護ヘルパー男性が語る、転職後に直面した大幅な減収と、業務中の負傷すら「自己責任」にされかねない冷酷な組織の対応など、さらなるシビアな現実を紹介する。【前後編の後編/前編から読む】

目次

取材者プロフィール

福田義之(49歳・仮名)
最終学歴……1999年大学卒 
出身地……神奈川県川崎市 
現住所……東京都品川区 
居住形態……持ち家(マンション)、ローン返済月6万2000円
職業……高齢者施設ヘルパー 
収入……年収約330万円 
家庭状況……妻、長男、長女 
最近の大きな出費……お墓参り(交通費、お布施、お花代) 1万6700円

前職から年収170万円の減収

肉体的にも精神的にも重労働だが、賃金は本当に安い。養成社員に採用されたときの初任給は18万4000円。1勤務で5000円の手当が出る夜勤を4回こなしても、月収は20万円ほどだった。明細書を見たときは溜め息をついた。

ヘルパー資格を取得して正規職員に昇格した今も、待遇が格段に良くなったということはない。

「3年目で基本給がやっと20万円になりました。慢性的な人手不足なので夜勤を月6回やっているのですが、月収は23万円、わずかばかりの手当が出て、総額は24万円台の半ばですよ。年収は期末手当込みでも330万円。責任の重さと肉体的疲労度を勘案したら安すぎると思う」

前の会社も下請け旅行会社だったから、そう賃金の高い方ではなかったが、それでも年収は500万円あったからざっと35%近い減収だ。頭がクラクラしてくる。

福田さんの奥さんは子どもが生まれてからはずっと専業主婦だったが、今の収入で住宅ローンや教育費を賄うのは不可能。福田さんが前の仕事を失ったときにまた働き出した。

「妻は美容師をやってたんですよ。今は調髪だけのカットハウスチェーンで6時間勤務の準社員という身分で働いてくれている」

奥さんの収入は月18~19万円、これがあるから住宅ローンと管理費・修繕積立金が払えている。だから怒らせないよう気を遣う。朝のゴミ出し、トイレと風呂場の掃除などは福田さんが率先してやっている。

負傷しても労災を認めぬ組織

「実はわたし、もう辞めようかなと思っているんです。腰痛や関節痛だけでなく鼠径(そけい)ヘルニアを抱えていまして、一般的には脱腸というやつです。命に関わるものじゃないけど、手術で修復しないと根本的に治ることはないと言われているんです」

入院期間はどのくらい必要か聞いたら1週間ということで、上司に相談したところ「それは困ったな」という言い種。

「ヘルニアになったのは、後方に転倒しそうになった高齢者をとっさに支えようとしたからなんです。踏ん張った途端に股の付け根がプニュッとして鈍痛を感じた。これは労災でしょ。それを困ったなとはどういう了見なのか。怒り心頭ですよ」

有給休暇の申請も遠慮しなければならない雰囲気で、大手を振って休めるのはインフルエンザ、結膜炎、感染性胃腸炎などになったときか、親族の忌引きだけ。これでは気持ちが折れる。

「高齢化社会だから今後も介護の需要は高まる。介護従事者はエッセンシャルワーカーとして尊敬されている。こんな立派なことを言っている人たちに聞いてみたいですよ。だったらあなたはいくら給料を貰えば排泄介助やおむつ交換をやりますかってね」

介護のプロとおだてられ、責任や奉仕の精神だけを押し付けられても納得できない。こんな仕事からはもう解放されたい。

【前編から読む】
「45歳で失職、年収330万の介護職」で疲弊……夜勤で1人15人を担当する49歳“中年貧困”のリアル

『限界労働者 格差社会にあえぐ22人の生活』(増田 明利著)より引用
限界労働者 格差社会にあえぐ22人の生活』(増田明利著)より引用

著者:増田 明利(ルポライター)
1961年生まれ。1980年都立中野工業高校卒。ルポライターとして取材活動を続けながら、現在は不動産管理会社に勤務。2003年よりホームレス支援者、NPO関係者との交流を持ち、長引く不況の現実や深刻な格差社会の現状を知り、声なき彼らの代弁者たらんと取材活動を行う。著書に『今日、ホームレスになった』『今日、派遣をクビになった』『今日から日雇い労働者になった』『今日、会社が倒産した』『本当にヤバイ就職活動』『今日からワーキングプアになった』『貧困のハローワーク』『今日、借金を背負った』『お金がありません』(いずれも彩図社)、『不況!! 東京路上サバイバル─ホームレス、28人の履歴書』(恒友出版)、『仕事がない!―求職中36人の叫び』(平凡社)、『ホープレス労働─働く人のホンネ』(労働開発研究会)がある。

  • 1
  • 2
  • 次のページへ

あわせて読みたい

カテゴリー一覧

All Aboutサービス・メディア

All About公式SNS
日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
公式SNS一覧
© All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます