人間関係

「貯金ないの?」「僕らは助けられないから」息子に宣言された58歳女性。頼る気はないが虚しい……

夫婦で必死に働き、二人の息子は独立。ようやく一段落したところだが、老後資金が不安だという58歳女性。日々の生活に追われ、貯蓄はできなかった。つい息子に愚痴をこぼしたら、夫婦の人生を否定されるような言葉が返ってきて……。※サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

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老後を考えると不安が募る(画像:PIXTA)
老後を考えると不安が募る(画像:PIXTA)

子どもたちを育てるのに懸命で、気づいたら自分が年をとっていた。そう思っている人は少なくない。金融経済教育推進機構の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によれば、50代の2人以上世帯の場合、金融資産保有額の平均は1,908万円、中央値は700万円だという。金融資産を持っている人といない人の差が大きい。住宅ローンや子どもの学費に追われて、金融資産を保有していない世帯も18.2%いるという。

住宅ローンが終わって子どもも成人したけれど

「夫も私もずっと必死に働いてきて、なんとか家も買った、二人の子どもたちも大学まで行かせてようやくホッとしたところです。でも一段落してみたら、これから私たち、どうやって暮らしていこうと、途方に暮れている感じですね」

アユミさん(58歳)は困惑したようにそう言った。短大を出て就職し、1歳年上の男性と職場結婚したのが28歳のときだ。当時の慣習に従って彼女は退職したが、2年後、会社は吸収合併の憂き目にあい、夫はリストラされた。

「当時、私は長男を産んだばかり。子どもが生まれてうれしいはずが、夫と顔を見合わせてはため息をついていました。生後半年足らずで私は子どもを保育園に預けて再就職しました。夫は約1年後、ようやく就職できた。それ以来、日々生活のことしか考えていなかった」

それでも次男も産み、中古の一軒家を購入し、子どもたちの教育費は惜しまなかった。その過程でほとんど貯蓄はできなかったが、家族が元気でいればいいと気持ちを切り替えた。

不安ばかりが募る

「常に先の不安はありましたね。私も夫も収入が多いわけではなかったし、実家が裕福というわけでもない。自分たちの力で頑張るしかなかった。次男の大学入学のとき、学費が払えるかどうか心配で、次男も奨学金をと言っていたんですが、たまたま義父が亡くなって初年度納入金くらいの遺産を夫がもらったんです。義父は孫をかわいがっていたから助けてくれたと感謝しました」

長男は6年前、次男も3年前には独立した。家のローンも払い終えた。だが、そのとたんに夫が脳梗塞で倒れて救急搬送された。2カ月入院し、若干のまひは残るものの職場復帰したのが1年前だ。

「定年後も勤める予定でしたが、最近は『60歳でやめようかな』と言いだしています。年金がもらえるまでどうやって暮らしたらいいのか……」

先を考えると不安ばかりが募る。

息子たちにムカッときた日

もともと子どもたちを頼ろうなどとは考えていない。だが今年の正月、二人が帰ってきたときにうっかり愚痴をこぼしてしまった。

「せっかくおせちを作ったのに、二人とも友達とばかり会っていて親と過ごそうと思ってくれない。長男なんて大晦日から3日連続で朝帰り状態でしたからね。帰ってきて寝て、夕方また出かけてしまう。次男も似たようなもの。もったいないから食べてよと言って、ついいくらかかったと思ってるのよと言ってしまったんですよ。それでやめておけばよかったんだけど、お父さんは60歳でもう働かないって言ってるしとまで言ってしまった」

二人は顔を見合わせて、「貯金してないの?」と聞いてきた。貯金なんてできるような人生じゃなかったとアユミさんは自分たちの人生を振り返った。社内預金だって、何度あんたたちのために引き出したか分からないともこぼした。長男が「投資は?」とつぶやいた。

「目端が利かないというか、お金をふやす方法なんていくらでもあるのに。そのくらい勉強すればいいのにと長男は言う。次男は、少し前から株でもやっておけばよかったのにと言う。聞いてみたら二人は社会人として数年しかたっていないのに株やら投資やらで、私たちより貯金をもっている。『銀行に預けておけばいいという時代じゃないでしょ』って。なんだかもう……。私たちの人生が否定されたような気がしましたね」

子どもたちへ投資したのに

目端が利かないのは確かだったと今は思う。あのころ少しずつでも金を買っておけば、あのころ株式投資でもしていればと後悔はあるが、そうできなかった財政状況もあった。なにより子どもたちに投資したではないかとアユミさんは思うが、その子どもたちにそんなふうに批判されるとは思っていなかった。

「あのさ、僕らは助けられないからねと長男が言いました。助けてくれなんて言ってないでしょと私も切り返したけど、ああ、この子たちは本気で親とは関わりたくないんだなと分かって寂しかったですね。長男はどうやら結婚を考えている人がいるみたい。だからこそ親に使う金はないと言いたかったんでしょう」

頼る気はないが、頼らないでねと宣言されるのは少し傷つく。自分たちの勝手で生んだ子ではあるが、その子から関わりたくないそぶりをされるのも傷つく。子としてはけん制しておきたいのだろうか。けん制されるような親子関係だったのかとアユミさんはつい過去を振り返ってしまう。寂しいを通り越して、「かなり虚しい」とため息をついた。

<参考>
・「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」(金融経済教育推進機構)

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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