人間関係

「こんなはずじゃ……」実家に居座る3人の子に“老後の夢”を狂わされた60代女性の苛立ち

住宅の家賃が高騰し、子どもたちが実家で暮らし続けたいと思うのは当然かもしれない。だが、子の自立を想定して老後の夢を描いていた親世代にとっては頭の痛い問題だ。30代の子ども3人が今も自宅で暮らすという63歳女性に話を聞いた。※画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

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実家から出ていかない子どもに老後の予定を狂わされる親世代(画像:PIXTA)
実家から出ていかない子どもに老後の予定を狂わされる親世代(画像:PIXTA)

一人暮らしはしたいが、まず家賃のハードルが高すぎる。都会では特にそうだろう。アットホームが2026年4月に発表した家賃動向調査によると、東京23区のシングル向けマンションの家賃は22カ月連続で値上がりし、平均11万円を超えているという。

親の持ち家があるなら、子どもたち世代が出たくない、自宅で暮らしたいと思うのも当然かもしれない。だが親世代は、子どもが自立することを想定して老後を考えていたりするから、互いに相いれないものがある。

自立していくと思っていたのに

35歳の長男、33歳の長女、31歳の次男。3人の子どもたちが今も自宅で暮らしているというマリさん(63歳)は深いため息をついた。

「私たち夫婦の想定では、子どもたちがみんな出て行ったら、家を売って小さなマンションを買って暮らすことになっていました。少なくとも長男と長女はもう家にはいないはずだった……」

ところが3人子どもがいれば、みんながすんなり大きくなったわけではなかった。長男は大学に入ったものの、「どうしてももともと第一志望だった別の大学に行きたい」と中退して2年浪人した。第一志望に入学し直したが、現役生ではなかったために就職で不本意なことになり、入社した会社を3年で辞めている。

「その後、2度くらい転職して、ようやく今のところに落ち着いた。長女はすんなり大学まで出ましたが、その後は演劇に没頭して、今もアルバイト生活。とても自分で賃貸住宅に住める状況ではありません」

30代の子どもが3人もいるのは……

次男は中学時代から不登校になった。繊細で優しい子だったためか、なにげない他人の一言に傷ついてしまう。次男を巡っては、夫婦間でもさんざん揉めたし軋轢(あつれき)も生んだ。その後、独学で高卒認定をとり、夜間の大学に通って、今は不登校の子が通う塾の講師となっている。人気のある講師らしいが、身を削って他人のために走り回るタイプで、自立して一人暮らしをする気などなさそうだ。

「長女は一人で生活したいと言ったこともありますが、なにせお金がない。アパートを借りても家賃が払えなくなって、私たちが尻拭いをするのはごめんだからと言ったら、一人で暮らすと言わなくなりました。どこでどうしているのやら、時々しか帰ってこない時期もあります。連絡はくれるし大人だから放ってありますけど」

30代になった子どもたちが3人も家にいるのは、非常にうっとうしいとマリさんは言う。子どもは自立するもの、社会に送り出すのが親の務めだと思って頑張ってきたのに、結局、誰一人自立していないというのがマリさんの言い分だ。

できる限りのことをしてやればいいという夫

ところが夫の意見は少し違う。子どもたちが元気で成人したのだから、親の務めは果たした。あとは彼らの人生だから、好きなように生きればいい。衣食住全ての面倒は見てやれないが、寝るところと食事くらいはいいじゃないかというのだ。

「言われない限り、ふだんは子どもたちの食事の用意はしませんが、帰ってきてはごそごそ自分で作ったりしているようです。使われたくない食材は『使うな』と貼り紙をしています。夫と一緒に食べようと思っていたステーキ肉を長男と長女に食べられたときは本気で激怒しました」

というのも、マリさんには夫婦の老後という問題があるからだ。職場結婚だったが、当時の慣習にしたがってマリさんは退職、その後は子育てに忙しく、パートでしか働けなかった。子どもたちの学費にもお金がかかり、老後の資金が圧倒的に不足している。親の遺産もほとんどない。ないどころかマリさんの親の生活費まで一時期は援助していたくらいなのだ。

夫の定年まであと2年なのに

「夫の定年退職まであと2年。そうなったら家を売って、駅近くの小さなマンションに住むのが私の目標だったんです。今住んでいる一軒家は夫婦には広すぎるし、駅からは遠すぎる。年をとると出不精になるけど、駅が近ければどこにでも行ける。二人で身軽に、それぞれ趣味を楽しむ生活を望んでいたんです」

ところが子どもたちはいつまでたっても出ていかない。時々「食費代わり」とお金を入れてくれることもあるが、あまり当てにはならない。長女などは早朝から風呂に入って出掛けることもあり、光熱費を考えるとイライラするとマリさんは言う。

「みんな自立しなさい、苦しくても一人暮らしをしなさいと言ったこともあるけど、誰もちゃんと耳を傾けようとしない。元気でいるのだからいいじゃないと周りも言う。そんなふうに甘やかすから、誰も結婚もしようとしない。こんなことでいいのかしらと私は本気で憂えているんですが、誰も真剣に受け止めてくれないんですよ」

最後にマリさんはポツリと漏らした。「あんなに一生懸命、3人を育てたのに、何の還元もないんですよね」と。もちろん見返りを求めて子育てをしたわけではないだろうが、「孫の顔さえ見られない」ことに寂しさを感じているのは確かなようだ。

<参考>
・「2026年3月 全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向」(アットホーム株式会社)

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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