
SNSで「フレネミー」が話題になっている。これは友達(Friend)と敵(Enemy)を合わせた混成語で、「友達を装う敵」のこと。2000年ごろからテレビや雑誌で取り上げられてはいたが、ここへ来てまたネット上をにぎわせている。
まるごと褒めようとしない友人
「会社で仲よくしている友人がいるんですが、いつでも些細な毒があるんですよね。悪い人じゃないし、一人暮らしの私が風邪で寝込んだときなんて、すぐ食べられるようなものを運んでくれて、ぱっと作って『無理しちゃダメよ』とお礼をいう間もなく帰っていくような人。だけど、時々、毒がチラッとのぞくんですよね」
そう言って苦笑するのはアリサさん(36歳)。同期のその友人とは言いたいことを言い合える仲だが、それでも彼女の「毒」には時々ムッとするという。
「私は長く付き合っている彼がいるんですが、互いにあまり結婚を意識していないんです。彼女もそれは知っているはずなのに、ふとした拍子に『やっぱり付き合いが長すぎると、男は若い女に走るよねえ』って。それではたと気づいたように『いや、あなたと彼は違うだろうけど』ととってつけたように言う。彼と待ち合わせていたとき、たまたま彼女に会ったことがあるんですが、あとから『彼、感じのいい人ね』と言いながら、『なんかでも、どこか日本人離れしているというか、すごく原始的な感じですてきじゃない?』と。原始的って何よと思ったんですが、彼、実はサル顔なんですよ。本人も私も気にしていないからいいけど、原始的って褒めてないだろって感じ」
大事なことは話せない
そもそも容姿に言及すること自体、今はあまり許されることではないが、彼女はアリサさんの体型にも時々口を出してくる。
「昨年の夏、フレンチスリーブのブラウスを着ていたら、『アリサって二の腕がかわいいね。ぷくぷくタルタルしてて』と触ってきたんです。気持ちいい、こんな柔らかい腕見たことないって。失礼でしょう」
冗談のつもりかもしれないが、「何かあったらこの人は私を裏切る可能性がある」とアリサさんは思っている。大事なことは彼女には明かさないことにしているそうだ。友達でいながら、いざというときは敵になる可能性が大きい。それこそがフレネミーかもしれない。
道は違っても親友だと思っていた
友達でありライバルでもあるという関係は珍しくない。だが、それはフェアな関係を維持しながら、切磋琢磨して成長していくという目標がなければ成立しにくい。友情も時を経て、互いの環境が変われば、変化が生じてくるものではないだろうか。
「小学校からの親友がいます。子どものころは同じ団地に住んでいて家庭環境も似ていたけど、高校を卒業したあたりから違う道を歩むようになった。それでも彼女はいつでも私の親友だと思っていました」
そういうのはマチコさん(40歳)だ。東京近郊で育ち、マチコさんは都内の大学に進学、親友のユミさんは専門学校へと進んだ。互いに将来の夢を叶える第一歩のはずだった。
「ただ、ユミは専門学校を中退してしまったんです。何があったのかはよく分からないけど、ある晩、呼び出されて『私には向いてない』という彼女に朝まで付き合いました。私は彼女を信じていたから、きっとまた自分の道を見つけると思ってた」
その気持ちが通じたのだろう、ユミさんは新たな道を見つけて勉強し直し、手に職をつけて着実にキャリアを重ねていった。マチコさんも大学卒業後、希望していた企業に就職したが、なかなか思うようにはいかなかった。そんなときも、ユミさんが「道は違うけど」と励ましてくれた。
「女の友情なんてあてにならないとよく言われるけど、私とユミには通用しないと思っていました」
交際に反対した友人がとった行動とは
30代半ばでマチコさんは恋に落ちた。相手は離婚を前提に別居している既婚男性だった。それを聞いてユミさんが大反対した。
「今まであなたがどんな生き方をしても信じてきたけど、これだけはダメだよって。でも相手は実際に別居しているし、離婚話も進んでいた。それは全部、書類などを見せてもらって分かっていることでした。なのにユミは大反対したあげく、連絡を断ちました」
その後、彼から連絡があった。ユミさんが彼を脅したのだという。自分のことを思っての行動だとマチコさんは感じたが、彼が言うには「脅したあげく、ボクを誘惑してきた」のだという。
「まさかと思いましたが、なんとかユミをつかまえて真相を問いただしたんです。そうしたら最初は『あんたが不倫するのは許せなかった』と言っていたのに、問い詰めていくと『あんただけ幸せになるなんて』と敵意剥き出しでした。ショックでしたね。私たち、ずっと友達だったよねと言ったら、『何でも持ってるあんたが嫌だった』と。そんなことを言われても、生き方は人それぞれですからね。ユミだって恋人がいた時期もあるけど、私は嫉妬なんてしなかった」
それ以来、ユミさんとは疎遠になっている。その彼とは結婚し、子どもにも恵まれた。風の便りではユミさんは元気らしい。子どものころのことを思い返すと会いたいと感じるときもあるが、あのときの傷は消えていないとも思う。
「長年の親友のはずが、本心ではこちらを友達だと思っていなかった。そういうのはいつまでも傷が疼(うず)きますね」
マチコさんは少し寂しそうにそう言った。







