
今やAI依存が問題になるほど、毎日AIと話している人は多いようだ。AI依存が増えていることをどう考えるかと、とあるAIに問うてみたところ「AIはうそをつくこともあります。しょせん過去の統計からしか語れません。選択肢は示せますが、それを決断するのはあなた自身。重大な問題なら、まず自分で考え、周りの人たちに相談してください」と返ってきた。AIも頼られ過ぎて困っているのかもしれない。
「物知り」「博識」と言われるママ友
今の集合住宅に越してきて1年たったナホさん(40歳)。同い年の夫と共働きで、8歳、5歳の娘を育てている。実家が近いので、実母がしばしば助けてくれるが、近所に上の娘と同級生のママがいて、越してきたばかりのころはいろいろ助言してくれた。
「このママ友が、ものすごく物知りなんですよ。近所でも評判の博識ママと言われていたようです。私が腰痛で悩んでいたときも『まずは数日間、安静にして。それから冷やすか温めるか、それでも痛みが弱まらないようなら整形外科に行ってね』と明快な回答。多忙ですれ違いが多くなった夫との間にバトルが勃発したときも、『怒ってはダメよ。まずは冷静に。自分の考えをまとめて、こうしてくれたらありがたい、こういうふうに関係を発展させたいと明るい目標をもって話し合って。責められたら男は逃げるだけだから』と。何でもよく知っている、よく分かっている」
近所のスーパーで子どもの万引きがあり、ママ友たちが立ち話をしていたときも、さりげなく「万引きって軽く言うけど、刑法においては窃盗罪。量刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金なのよ。ただ、今回は初犯だし微罪扱いになるんじゃないかしら」と言うんです。よく知ってるねと周りが感心したら、「昔、ちょっと法律を勉強したから」って。
蘊蓄(うんちく)というほど長く講釈するわけではなく、さりげなく入ってきてパッと決定的なことを言って去っていく感じだから、誰もがなんとなく「あのママはすごい」と思い込んでいた。
ママ友の娘を預かることになって
ところが、ナホさんの母が留守番に来てくれたとき、そのママ友の娘をたまたま預かることになった。
「母が夕飯を作って、彼女の娘にも食べさせたんですが、『本当においしい』と大喜びだったそうです。『ママはスマホがないと生きていけないの。いつもスマホを持ってて、ごはんも作らないからパパに怒られてる』と暴露、母が苦笑して『あなたが言う、博識女性の裏側はそういうことだったみたいよ』って。そのママ友、どうやらAI依存だったようです」
何かを決めるときは常にAIに聞いているようで、その後、彼女の夫も困っているといううわさも流れてきた。
開き直るようになった彼女
ママ友はその後、カウンセラーにかかって、いくらかスマホを手放す時間をもつようになったようだ。ただ、AIは相変わらず利用しているらしい。
「ところが最近は、開き直ったというか……。話をするとすぐ『AIさんが言ってた』という一言をつけるようになりました。本人がAIを利用しているという実感をもっているなら、それはそれでいいかと周りは、それとなく見守っています」
遊びにきた娘に聞くと、「ママがAIに聞いて料理を作ってくれることもある」という。AIも利用する側の使い方次第なのだろう。
AIは自ら話しかけてくることはない。だがいったんこちらがアクセスすると、「こういうことをお教えしましょうか」「もっと具体的に教えてください」など、続けようと思えばいくらでも話が続くようなシステムになっている。
AIの言いなりになってはいけない
あたかも雑談をしているような気持ちになるが、相手はあくまでも「人工知能」であり、感情をもって話しているわけではない。そこを勘違いすると、どんどんはまっていき、AIを親友のように感じていくのだ。大人でさえそうなのだから、思春期の子どもたちがそうならないとは限らない。
「うちの娘も時々私のスマホを使いたがることがあります。同級生の中にはAIを使ったことがある子もいるみたいで。私たちの時代とは全然違う。早くAIの利用方法などを教育しなければと思っています」
仕事で使うならいざ知らず、日常生活で自ら解決しなければいけないことや感情の問題までAIに頼ってはいけないとナホさんは考えている。
「おもしろがって利用するのと、AIの言いなりになってしまうのとは違いますからね。もちろんAIからいい知識を得ることもあるでしょうけど、なんだか怖い時代になったと痛感しています」
人は考える葦である。自ら考えることを放棄したら、生きている意味を見失うこともあり得そうだ。







