
50代の男性たちの間では、どうやら「友達がいない」のが悩みの1つになっているようだ。女性たちは、むしろ「ソロ」で行動するのがはやりであり、旅行にしろ習い事にしろ、「初めて1人で行ってみたら楽しい」という声が多いのが最近の特徴だ。
グループで行動するのが嫌なわけではないが、どちらかといえば家族やコミュニティーの中でずっと気を使ってきた女性たちは、1人なら「気を使わなくて済む」快適さを身につけてきたのだろう。一方で男性たちは、「この年になったからこそ友達がほしい」と思うのかもしれない。
夫がしょぼくれて帰ってくる
50代になってようやく子どもたちから手が離れつつあり、まだ親の介護問題も具体的になっていない今だからこそ、「自分の楽しみを追求したい」「老後も続けられる趣味がほしい」と動き出す人たちは多い。
「私も若いころやっていたテニスを再開、仲間もできました。昔のように動けないと分かってからは朝のジョギングを始めたら、ジョギングや犬の散歩をしている近所の人たちとのコミュニケーションも密になって。週5日のパートでは、時々みんなと食事会もしています。同世代はあちこちでそういう仲間作りをしているんだなと思っています」
アサコさん(52歳)は、結婚して24年たつ。長女はすでに就職して家を離れており、20歳になる次女は大学生。週末以外はバイト先や友達と夕飯をとってくることが多く、ここ数年、平日にアサコさんが家で食事を作るのは朝だけだ。
「週末、次女も私もそれぞれ友達と会い、夕方待ち合わせて食事して帰ることもあります。夫も誘うんですが、あまり外に出たがらなくて」
30代から40代にかけては仕事で忙殺されていた夫も、50代半ばを迎えて時間的余裕も出てきたのに、時々何をしたらいいか分からない、友達がいないと愚痴を言っていた。
「今後の人生を見すえて、今のうちに何か趣味を始めた方がいいよとか、近くにスポーツジムができたから行ってみたらとか、いろいろ言ったらようやく腰を上げた。健康で長生きするためにジムで体を鍛えるか、と会員になったのはいいんですが」
ジムで友達作りをしようとする夫に違和感
数カ月たったころ、「ジムでの人間関係になじめない」と夫が言うようになった。アサコさんには「ジムでの人間関係」の意味が分からなかった。スタッフとうまくいかないのかと尋ねると「来ている人たち」だという。
「互いに目的を持ってジムに通ってきているのだから、人間関係なんて生じないでしょとつい言ってしまいました。すると夫は『友達がほしいんだ』とポツリ。何かが違っているような気がしていたんですよ」
さらに数週間たったとき、夫は「よく顔を見かける人3人に、帰りに1杯どうですかと誘ったけど、誰も受け入れてくれなかった」と寂しそうにつぶやいた。だが、その3人と立ち話さえしたことがないという。
「何度も顔を見かけて話をするようになって、何かきっかけがあって1杯どうですかなら分かるけど、顔を見かけるようになっただけでいきなり1杯と言われても、行きましょうとはなかなかならないんじゃないのと言ったんです。すると『でも同じジムに通っているわけだから』って。友達作りにジムに行っている人は少ないんじゃないかなと言ったらけげんな顔をしていました。なんだかあの人、自分が友達を作ると決めたら、何がなんでも一気に距離を縮めようとしているみたいですね」
そんな人は今どき気持ち悪がられるだけでしょうとアサコさんは一刀両断だ。
そもそも大人に友達は必要か
大人の行動には目的があるとアサコさんは言う。習い事をする、仕事をするなど目的を持ってある場所に行く。たまたまそこに集った人と気が合えば友達になる可能性もある。それだけのことではないのか。
「友達を作る目的で何かをするというのが私には分からなくて。それなら一番利害関係のない学生時代の友達と旧交を温めるのが一番いいと思うと夫に言ったんですよ。そうしたら今さら昔の友達に会うのは面倒だって。まあ、それも分かりますよね。互いに違う人生を歩んできてるから、そこを埋めるのが大変だったりもする。それなら無理に友達なんて作らなくてもいいと思うんですよね、ジムに行って運動を楽しんでいれば、いつか知り合いができるかもしれないし」
すると夫は「アサコとは価値観が合わない」と言い始めた。
「きみはあっさりし過ぎている、情緒がない、人の気持ちを考えようとしないなどと、けっこう私の悪口を言うんですよ。なので、『私の生き方に私は満足しているのだから口を挟まないでよ、あなたこそいい年して友達がほしいなんて気持ち悪い』と言ってしまいました」
友達は寂しさを埋めてくれる存在ではない
その後、なんとなく二人の関係はギクシャクしているそうだ。アサコさんは友達を作るなと言っているわけではない。友達ほしさにジムに行くことが違うのではないかと言っているのだ。結果として友達ができればそれに越したことはないが、急速に親しくなった関係は、顔見知りでいた方がよかったと後悔することもあると伝えたかった。だが真意は夫には伝わっていない。
「ただ私が冷たい女だと思い込んでいる。まあ、確かにべたべたした関係は好きじゃないし、友達がいようといまいと、私は私がしたいことを実行する。それでいいと思っている」
この年になって「夫が意外にも、かなりの寂しがり屋の上、人との距離のとり方、縮め方に無理がある」タイプだったと初めて知ったとアサコさんは言う。
友達イコール自分の寂しさを埋めてくれる人ではない。夫はその原点から考え直した方がいいと彼女は苦笑した。







