うつ病

心が限界なのに、人には笑顔で接してしまう「微笑みうつ」とは? 自分も他人も気付きにくい危険性も

【精神科医が解説】人前では笑顔で過ごせるのに、一人になると気持ちが沈んでしまう「微笑みうつ」。つらさが周囲に伝わらず、気付かぬうちに限界を超えてしまうことがあります。危険性と対処法について、分かりやすく解説します。(※画像:Shutterstock.com)

中嶋 泰憲

中嶋 泰憲

メンタルヘルス ガイド

精神科医

慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学先でのカルチャーショックから、自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人のメンタルヘルスの重要性を悟りました。精神病院の現場から、みなさまの毎日の心の健康管理にお役に立てるよう、メンタルヘルスに関する情報発信を行っていきます。

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雑談する人たち
人前では普段通り笑顔で過ごせる「微笑みうつ」とは?

人前では笑顔で振るまっていても、1人きりになると落ち込み、涙がこぼれてしまう「微笑みうつ」。つらさが周囲に伝わらないだけでなく、症状の深刻さも自覚しにくく、知らず知らずのうちに心の限界を超えてしまう可能性があります。場合によっては、うつ病や不安発作のきっかけになることもあるため、注意が必要です。

微笑みうつの問題点……実際の「症状」と人から見える「徴候」の不一致

微笑みうつに限らず、医学的には、実際に起きている「症状」と、他人の目に映る「徴候」は、必ずしも一致しません。そして、微笑みうつの場合は特にそれが顕著です。本人が1人になったときに心の不調を抱えていても、周囲への感情表出としては「笑顔」しか見えません。症状と徴候の不一致が生じるわけです。

「笑顔」はその人の感情の表れだと思われがちですが、実際には自然に起こるものだけではありません。楽しい気持ちではないときでも、少し無理をして笑顔を作った経験は、誰でもあると思います。笑顔は、意志の力である程度コントロールできてしまうのです。そして、周囲がその笑顔を「作られたものかどうか」を見抜くのは、親しい間柄であっても難しいものです。

心の病気の中には、すっかり無表情になるものもあります。本人の気分に問題がなくても、脳機能に関わる問題から全く笑顔を作れなくなるケースです。微笑みうつの場合は、その真逆のことが起こります。

無理な笑顔は危険サイン! ストレス社会の「心のSOS」には適切な対応を

「微笑みうつ」はうつ病の1つというより、メンタルヘルス上の問題の1つと捉えるほうがよいかもしれません。現代のストレス社会で、誰にでも起こり得ます。心のつらさをエスカレートさせないために、日頃のストレス対策が重要です。

つらいとき、愚痴をこぼせる人はいますか? もし会社や学校では平気なのに、1人になると涙がこぼれるような状態が続いている場合、すでにうつ病の初期段階になっている可能性もあります。「まだ大丈夫」と過信せず、精神科か心療内科で相談してみることも、ぜひご検討ください。

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