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Q. ケーキの保冷用ドライアイス、子どもに遊ばせるのは危険でしょうか?

【薬学部教授が解説】ケーキについてくるドライアイスは、少量でも扱い方を誤ると危険です。見た目は楽しくても、二酸化炭素濃度の上昇は目に見えません。リスクと注意点を分かりやすく解説します。(※画像:shutterstock.com)

阿部 和穂

阿部 和穂

脳科学・医薬 ガイド

薬剤師

東京大学薬学部卒業、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員、星薬科大学講師を経て、武蔵野大学薬学部教授。薬学博士。専門は脳科学と医薬。

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Q. ケーキの保冷用ドライアイス、子どもに遊ばせるのは危険でしょうか?

ドライアイスで実験する子ども

子ども向けの実験などでも見かける「ドライアイス」。安易に遊ばせるのは実は危険!?

Q. 「うちの子どもは、ケーキの保冷用ドライアイスで遊ぶのが大好きです。白いモクモクが出てくるのを楽しんでいますが、最近『ドライアイスで遊ぶのは危険』と聞いて少し心配です。ケーキの箱に入っているくらいの量なら、危険性はないと考えていいでしょうか? 安全な扱い方や注意点があれば教えてください」

A. 危険です。誤った認識は、取り返しのつかない事故にもつながりますのでやめましょう

結論から申し上げると、私自身は、ドライアイスを子どもの遊びに使わせることは絶対にしません。薬学の研究をする上でも、その危険性をよく知っているからです。

ドライアイスは「固体の二酸化炭素」です。雪のような塊でおよそマイナス80度を保つので、保冷剤としてよく使われていますが、大気圧・常温下では徐々に気体(二酸化炭素ガス)となって、空気中に放散されます。

通常の大気中の二酸化炭素濃度は0.04%です。このレベルでは人体への影響はありません。しかし、0.1%を超えると眠気が生じ、1%を超えると酸素不足を補おうとする反射で呼吸が速くなります。10%を超えると呼吸困難や意識喪失をもたらし、20%では中枢神経が麻痺(まひ)し、死に至ります。

海外では、インフルエンサーが遊びのつもりでプールに大量のドライアイスを投入して死亡してしまった例があるようです。国内でも、棺桶に入れた大量のドライアイスが原因で、故人とお別れをしていた家族が亡くなってしまった事例が報告されています。最近では、大学の研究室で大量のドライアイスを搬入した際、充満した二酸化炭素により学生が死亡する痛ましい事故も起きてしまいました。

もちろん、有害性は濃度次第です。コップ1杯程度の水に小さなドライアイスのかけらを入れて、モクモクと白煙が出るのを観察する程度で死ぬわけではありません。しかし、二酸化炭素ガスは目に見えませんから、その場の濃度がどれくらい危険な状態かは分かりません。

加えて、こうした「モクモク遊び」を経験した子どもが、ドライアイスは危険のない楽しいものだと誤った学習をしてしまうと、親の目の届かない場所で、大量のドライアイスで遊んでしまう可能性もあります。万が一の事故が起きてしまってからでは遅いのです。

親自身が危険性を理解せず、「遊んでいいもの」と誤って教えてしまうことは、明らかな間違いです。

また、ドライアイスを使った子ども向けの科学実験などは多くありますが、モクモクと湧き上がる煙を「面白いね」と見せたところで、実際に子どもが得られる学びはほとんどないのではないでしょうか。ケーキに添えられているドライアイスは、あくまで保冷目的のものです。遊びに使うものではないと、きちんと伝えることが親の務めだと私は思います。危険性のあるドライアイスで遊ばなくても、誕生日やクリスマスなどのイベントを楽しむ方法はいくらでもあるのです。考え方は人それぞれでしょうが、科学者として、そして子どもを持つ親の1人として、ドライアイスで遊ぶのは「無益なことで、絶対にやめるべき」と思います。
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