リモートワークはコミュニケーション不足になる?
企業でリモートワークから出社回帰を唱えがちなのは、若手世代よりも中高年世代が多いようだ。その理由として多く挙げられるのは、「社員間のコミュニケーション不足」だという。ただこの感覚は世代間で大きなギャップもあるようだ。スマホやSNSを頻繁に利用する世代は、「リモートワークはコミュニケーションが不足する」と言われても、あまりピンとこないのではないだろうか。仕事に必要なコミュニケーションは、「オンライン会議やチャット機能などで十分にできている」と考えられるからだ。
管理職が不満「評価査定が難しい」
さらに、リモートワークは、勤怠管理や評価査定が難しいという声も、管理職から聞こえてくる。「業務が可視化できないから、公平な判断ができない」というのだ。しかし、これも考え方を改めてみる必要があるのかもしれない。リモートワークでは、プロセスが見えにくくはなるが、仕事の成果は出社したのと同等かそれ以上に求められる。リモートワークを成功させるには、自己管理能力が求められるため、本人の総合的な能力や将来のポテンシャルを測りやすい場合もある。つまり、リモートワークのメリットを利用して、管理職はこれまでの査定方法を進化させることに挑戦してみればいいのではないだろうか。
出社回帰の奨励で会社を辞めることに
とあるメーカーで国内営業を担当する中島さん(仮名/36歳女性)は、入社10年以上でリモートワーク歴が3年。現在、共働きで子育て中だ。会社では、新しい顧客を任されるなど、一人何役もこなし、充実した毎日を過ごしている。3年前からリモートワークとなった後は、仕事の合間に家事をこなし、小さな子どもも目の届くところに置きながら仕事に効率的に打ち込んできた。明らかに仕事の生産性は改善し、生活と仕事を両立できていることでモチベーション高く働いてきたと自負してきた。
ところが、昨年から職場の上司が変わり、リモートワークから職場回帰へと働き方が昔のスタイルに戻ろうとしている。中島さんは、その事実を受け入れ難かった。
すべてがリモートワークに起因するとは言えないが、社内の雰囲気が明るくなり、以前よりも業績もよく、退職率も明らかに下がっていたという。少なくとも、会社への貢献度、働くモチベーションのアップは、リモートワークの定着と深い相関関係があると思われ、職場の人間関係にも不満はなかった。中島さんの同僚も同意する人が多く、一緒に新しい上司に掛け合った。
しかし、職場のコミュニケーションをもっと高めたいという理由で出社回帰の方針は変わらない。社外ネットワークセキュリティーの問題や私用端末の使用が問題だとも言われた。50代後半の上司が、昭和時代の職場の価値観で、働き方を変えようとしていると思われた。そのため、中島さんは、この後もうこの会社では働けないと退職の意思を固めたという。
失いそうになり、仕事観に気付きが……
「働き方=リモートワーク」を脅かされ、中島さんは転職を決意した。この3年間で、自分の生活は変わり、就労観にも大きな変化があったことに気付いた。リモートワークのおかげで仕事とプライベートの両立が実現し、特に家族を支えるために考えなければならないさまざまな問題が解決していた。それを失うことが現実になった時、確立した新しい仕事観やワークスタイルが理解できたのだ。そして、リモートワークに向いた仕事とそうではない仕事があるのではという気付きもあった。
中島さんは、30代半ばを迎え「自分にとってキャリアを考え直す最後のチャンスかもしれない」と思い、初めての転職活動に挑もうとしている。以前から関心が高く得意なIT知識を活かす仕事に就くことを考えているという。
「リモートワークという“働き方”を軸に、自分が将来のキャリアの方向性を決めることになるとは、これまで一度も考えたことがなかった」と中島さん。しかし、今ではハッキリとそれが仕事選択の重要な要素となっていると確信した。
いい時代が到来したと中島さんが笑顔で語るように、今後も人々の転職の理由は多様化していくのだろう。企業は、社会の変化や社員のニーズを今後も引き続き注視していかなければならない。








