俳優の使命は、物語をお客さんに届けること
――高杉さんは10代からご活躍されていますが、俳優の仕事は楽しくてやめられなかったのですか? それとも特別な充実感があったのでしょうか?高杉:僕は、俳優の仕事は特別な職業とは思っていないんです。俳優は0から1を作り出す仕事ではありません。すでにある “1” の題材を、スタッフや他のキャストの皆さんと一丸となって “100” に持っていく作業だと思っています。
僕がここまで続けて来られたのは、お客さんに届けるまでの1から100にする作業にやりがいを感じられたから。脚本に描かれた世界を、スタッフや俳優の力で形にしていくプロセスには大変なことはたくさんありますが、やり遂げた時の達成感が大きいんです。
――芝居を始めた10代の頃から、そのような思いを抱いていたのでしょうか?
高杉:「お客さんに届ける」ということを強く意識するようになったのは、舞台の仕事をするようになってからですね。スタッフとキャストが練習を重ねて作り上げてきた世界を、お客さんに直接見ていただけるのが舞台。ダイレクトに伝えることができるので、そこから得るものは大きいと感じています。
もちろんドラマや映画の芝居は、また違ったテクニックが必要ですし、完成した作品を見ることができる楽しみもあります。
映像作品も舞台も両方できることは本当にありがたいことですし、物語の世界を観客の皆さんに魅力的に伝えるのが俳優の使命だと思っています。
ハッピーになれる爆笑コメディーが大好き
――All Aboutでは取材の際、好きな俳優、監督、作品などを伺っているのですが、高杉さんは大好きな映画など、ありますか?高杉:僕は『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』(2009)などの『ハングオーバー!』シリーズが大好きなんです。映画の中で一番好きで、何度も見ています。見た後、幸せな気持ちになれる映画が好みで、『ワンダー 君は太陽』(2017)も大好きな映画です。
――コメディーやハートウオーミングな作品が好きなのですね。ちなみに劇場で映画を見るときのベストポジションはありますか?
高杉:僕は真正面から見たいタイプなので、ど真ん中よりちょっと後ろの座席が好きです。そこが劇場のベストポジションなのではないかと思うので。その席が取れなかった場合、一番後ろの真ん中辺りを選びます。
そしてポップコーンとドリンクは必ず買います。劇場で映画を見るときは買わなくちゃいけないような気持ちになるんですよね(笑)。
気持ちがどんどん熱くなっていく作品
――完成した映画を見た感想を教えてください。高杉:最初に脚本を読んでいるので展開は分かっていたものの、実際に映像で見ると、登場人物の汗ばむ感じや土の匂いなどが立体的に迫ってきて、五感が刺激される作品だと思いました。事件の真相に近づくにつれて、登場人物たちと同じテンションで気持ちが熱くなっていきましたし、見応えのある作品になってうれしかったです。
――最後に、楽しみにしているファンの皆さんに向けて、ご自身の見どころを。
高杉:僕が演じる佐野直也は観客の皆さんが一番感情移入しやすいキャラクターだと思います。「なぜこんなことが起こったのか」「誰がやったのか」とずっと思いながら事件を追いかけていく佐野に注目してください。警察側からの視点で作品を見られるのではないかと思います。ぜひ劇場で『盤上の向日葵』を楽しんでいただきたいです。
高杉真宙さんのプロフィール
1996年7月4日生まれ。福岡県出身。2009年に俳優デビュー。2014年『ぼんとリンちゃん』の演技で第36回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。2017年『散歩する侵略者』の演技で第72回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞・第9回TAMA映画賞最優秀新進男優賞を受賞した。舞台、ドラマ、映画など多方面で活躍。最新作は主演映画『架空の犬と嘘をつく猫』(2026年1月9日公開予定)。『盤上の向日葵』2025年10月31日(金)全国ロードショー
監督・脚本:熊澤尚人原作:柚月裕子『盤上の向日葵』(中央公論新社)
出演:坂口健太郎、渡辺謙 、佐々木蔵之介、土屋太鳳、高杉真宙、音尾琢真、柄本明、渡辺いっけい、尾上右近、木村多江、小日向文世ほか
音楽:富貴晴美
主題歌:サザンオールスターズ『暮れゆく街のふたり』(タイシタレーベル/ビクターエンタテインメント)
©2025映画「盤上の向日葵」製作委員会
撮影・取材・文:斎藤香










