しかし、私は「60代から、保有資産の一部を投資に回すことは必要不可欠」だと断言します。その理由は、大きく2つあります。
1. 60歳からでも運用期間は20年ある
人生100年時代と言われる今、60代は「老後の入口」にすぎません。平均寿命を考えれば、60歳から投資を始めても80歳まで20年間という十分な時間があります。投資のメリットは、複利の力を生かして資産を育てられる点にあります。20年あれば、無理のない範囲で運用を続けることで、お金の目減りを防ぎ、資産の価値を保つことができます。
金利がなかなか上がらない定期預金で、全てを現金で保有するほうが、むしろリスクが高いと感じます。物価高が定着したインフレ時代の今、NISAを活用したインデックス投資なら、インフレに備えながら少しずつ資産を育てることも可能です。
「もう60だから」ではなく、「まだ20年ある」と考える――この発想の転換こそ、これからのシニアの資産づくりに欠かせません。
2. シニア世代は「目的」がはっきりしている
60代で投資を始める最大の強みは、お金の使い道と時期が明確に見えていることです。若い世代のように、なんとなく将来のために投資するのではなく、いつ・何のために使うかを決めたうえで運用できます。例えば、「75歳で家のリフォーム資金に使いたい」「85歳になった時点で医療・介護費用を確保したい」など、使う時期を意識できるのが、シニア世代の大きな強みです。
この「出口の設計」があるからこそ、使う時期別にリスクをとる運用と、リスクをとらない運用の投資計画を立てられます。
「増やすための投資」ではなく、「目的に合わせて整える投資」――つまり、60代の投資は増やすためではなく、備えと安心のための行動なのです。
退職金がある人の安心ステップ
最後に、退職金などのまとまった資金がある人は、次のようなステップを踏むのもおすすめです。ステップ1:短期集中で枠を使い切る
60歳から65歳までの5年間で、NISAの非課税枠を可能な限り活用し、例えば年間180万円(月15万円などで)積み立てて約900万円を投資します。
ステップ2:目標を達成したら「放置」
この運用によって、老後の医療費や介護費として備える1000万円程度の資金を確保することを目指します。65歳以降は無理に追加投資をせず、その非課税の状態で85歳まで寝かせておくのが、最も堅実です。
60代からの投資は、決して遅くありません。大切なのは年齢ではなく「何のために、いつ使うか」を考えること。20年という時間をどう使うか、目的に沿って資産を整えていくことが、老後の安心につながります。







