老人ホームや高齢者住宅は高いというイメージもありますが、入居費がかからない施設や月額費用が手ごろな施設もあり、比較的利用しやすいケースもあります。老後の家計にとって負担を抑えられる選択肢が、どの地域に多いのか見ていきましょう。
全国1位は、圧倒的多数の大阪府!
全国47都道府県のうち、低価格プランをもつ介護施設数が最も多かったのは大阪府(338件)で、2位の福岡県(128件)や3位の北海道(119件)を大きく引き離しました。大阪は人口規模が大きいだけでなく、独居高齢者の割合が全国2位(25.8%)にあることも背景とされ(※1)、介護施設のニーズが強い地域といえます。続く上位には、神奈川県(107件)、埼玉県(105件)、兵庫県(87件)が並びました。いずれも大都市圏を抱えるエリアで、交通や医療体制が整っていることから施設需要が集中していると考えられます。また、静岡県や千葉県もランクインしており、首都圏や近畿圏の近郊都市での需要の高さが反映されています。
都内で、低価格プランの介護施設が多いのは板橋区!
また、東京都内で最も多かったのは板橋区(10件)でした。板橋区は23区北部に位置し、大規模病院が複数あり医療連携が取りやすいことや、交通の利便性が高いことから介護施設の集積が進んでいるようです。 2位は江戸川区(8件)。江戸川区は有料老人ホームの入居一時金相場が都内平均の約980万円に対して420万円と大幅に低く、費用を抑えたい世帯にとって魅力的な地域といえます(※2)。3位には八王子市(6件)が入りました。市部である八王子市は、特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅なども多いとされ、幅広い選択肢を持つ地域です。4位は足立区と練馬区、小平市(各4件)。住宅地が広がるこれらの地域でも、比較的リーズナブルなプランを提供する施設が一定数確認されました。
低価格プランなら、年金収入だけで利用できる?
今回の調査で対象となった低価格プランとは、入居時費用100万円以下、月額費用15万円以下の条件を満たす施設を指します。LIFULL 介護の編集長・小菅氏によると、低価格プランが増えている背景には高齢者世帯の経済状況の厳しさがあるといいます。高齢者の約4割が「年金のみ」で生活しているとされ(※3)、初期費用を抑えつつ月額利用料を現実的な水準にしたプランが求められているようです。
月額費用だけを見ると、現在の年金給付が厚生年金の場合(※4)は平均月13万~17万円前後で、低価格プランの月額費用と近い水準にあります。つまり、厚生年金を受給している単身高齢者であれば、年金収入内で費用を賄えるケースも少なくありません。一方で、国民年金のみの場合(※5)は平均月6万円程度にとどまり、年金収入だけでは不足しがちです。
老後の暮らし方は人それぞれ。自宅での暮らしを続けたい人もいれば、サービス付き高齢者向け住宅やシニア向け分譲マンションといった選択肢もあるでしょう。老人ホームだけが老後の住まいの答えではありませんが、もしものときの参考にしてみてはいかがでしょうか。
出典
お盆の帰省は介護について考える機会に「低価格プランを持つ介護施設数ランキング」をLIFULL 介護が発表
参考
※1:国立社会保障・人口問題研究所 令和6年日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)70ページ 2020年統計
※2:「LIFULL 介護」2025年7月17日掲載時点
※3:2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況 「所得の種類別の状況」を参考
※4:令和7年度の年金額改定についてお知らせします モデルケース①③厚生年金期間中心(20年以上)の男女を参考
※5:令和7年度の年金額改定についてお知らせします モデルケース②④国民年金(第1号被保険者)期間中心(20年以上)の男女を参考