普段は問題がなくても、親が病気や認知症になった時、何も知らないままだと家族は困ってしまいます。今回は、親世代とお金のことを円満に共有するための工夫を5つご紹介します。
親にお金の話を聞くって難しい……
親にお金の話を切り出すのは、誰にとっても難しいテーマです。特に同居していない場合、日常の会話に「貯金はどれくらい?」「保険は何に入っている?」などと唐突に聞くのは抵抗があります。親自身も「心配かけたくない」「自分のことは自分で」と思っている場合が多く、結果としてお互いが踏み出せないまま時間が過ぎてしまうのです。けれども、現実には親の体調はいつ変化するか分かりません。もし認知症を発症した場合、銀行口座の手続きや保険の請求が家族だけではスムーズにできなくなることがあります。「もっと早く聞いておけばよかった」とならないために、話し合いのきっかけをつくっておくことが大切です。
お金の話の切り出し方1:「きっかけ話題」を利用する
最も自然なのは、ニュースや身近な出来事をきっかけにすることです。「同僚のお母さんが急に倒れて、保険の手続きで大変だったらしいよ」といった話題なら、親も聞く耳を持ちやすくなります。直接「お金のことを教えて」と切り出すよりも、共感ベースで話を始めると空気が和らぎます。お金の話の切り出し方2:まずは全体像をざっくり知る
細かい金額や口座番号まで知る必要はありません。最初は「どこの銀行を使っているか」「加入している保険はあるか」「持ち家か賃貸か」といった基本情報だけでも十分です。メモに残すだけで、いざという時の安心感が全く違います。お金の話の切り出し方3:書き残す仕組みを一緒に考える
直接聞きにくい場合は、「エンディングノート」を勧めるのも1つの方法です。ノートに書いてもらうことで、親自身も「自分の思いを整理する」きっかけになりますし、子ども側も必要な情報を共有できます。お金の話の切り出し方4:公的支援や介護サービスについて理解する
お金の話を直接するのが難しければ、「地域のサービス」を話題にしてみるのも有効です。介護保険制度を利用するには、まず市区町村の窓口や地域包括支援センターに要介護認定を申請する必要があります。こうした制度の仕組みを親と一緒に調べたり、事前に相談に行ったりすると、自然に「万一の時の費用」についても話をつなげやすくなります。お金の話の切り出し方5:住居の介護環境を整える
親が高齢になってくると気になるのが、住まいの安全性です。段差をなくす、手すりをつける、浴室やトイレを改修するといった工夫は、転倒リスクを減らし、介護が必要になった際の暮らしを支える大切な備えになります。こうした住宅改修を行う際には、介護保険制度の「住宅改修費」を活用できる場合があります。
この制度は、要介護または要支援の認定を受けた方が、自宅での生活を続けやすくするための改修を行うときに利用できるものです。つまり、介護が必要と認定された後に申請できる制度であり、健康なうちに行うリフォームには対象外となる点に注意が必要です。
給付の上限は生涯で20万円。実際の自己負担は所得に応じて異なり、たとえば1割負担の場合は最大18万円、2割負担なら16万円、3割負担なら14万円が介護保険から支給されます。
ちなみに、ここでいう「1割負担」とは、健康保険の自己負担割合とは別の基準で、本人や世帯の所得状況によって「介護保険」で定められる負担割合をいいます。
住まいの話をきっかけに、「もし将来、介護が必要になったら」「どんな環境で暮らしたいか」といったテーマへ自然に話を広げることができます。今から親の希望を聞いておくことで、いざというときに慌てず、費用面の準備も立てやすくなるでしょう。