マネジメント

大谷翔平との共通点も。米野球殿堂入りを果たしたイチローが示唆する「成功」に向けた“最強の秘訣”

先ごろ、イチロー氏が日本人選手として初めて米野球殿堂入りを果たしました。その表彰式典でのスピーチが、成功を目指すあらゆる人への示唆に富んでいると話題です。特にイチロー氏の語る「夢」と「目標」の違いからは、成功へつながる道が見えてきそうです。※写真:AP/アフロ

大関 暁夫

大関 暁夫

組織マネジメント ガイド

東北大学卒。横浜銀行入行後、支店長として数多くの企業の組織活動のアドバイザリーを務めるとともに、本部勤務時代には経営企画部門、マーケティング部門を歴任し自社の組織運営にも腕をふるった。独立後は、企業コンサルタントの傍ら上場企業役員として企業運営に携わる。

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日本人選手として初めて米野球殿堂入りを果たしたイチロー氏 ※写真:AP/アフロ

日本人選手として初めて米野球殿堂入りを果たしたイチロー氏 ※写真:AP/アフロ

米メジャーリーグで活躍したイチロー氏が、日本人選手として初めて米野球殿堂入りを果たしました。その表彰式典でのスピーチが、スポーツ界にとどまらない成功へ向かう人への示唆に富んでいると話題になっています。

特に印象的だったのは

筆者が、イチロー氏のスピーチの中で特に印象に残ったのは、以下のくだりです。

「『夢』を見るのは楽しいが、『目標』は難しく挑戦を伴う。これをやりたいと口に出すだけでは十分ではない。本気ならば、それを達成するために何が必要かを真剣に考えなければいけない。私は、毎日の練習と準備が大事だと考え、その信念を守りながら自分の目標を定め続け、継続することが『夢』実現への礎を作ると学んだ」

イチロー氏は、愛知の名門、愛工大名電高校時代に2回の甲子園出場を果たし、3年生時はエースとしてチームをけん引しました。地元ではかなり知られた選手ではあったものの、体が細くプロスカウトの評価は決して高いものではなかったといいます。結果、ドラフト会議ではオリックス球団から、かろうじて4位指名を受けプロ入りこそ果たしたものの、決してメディアから注目されるような選手ではありませんでした。

そんな普通のプロ野球1年生だった(もちろんプロからドラフト指名を受けるだけでも、最高レベルの野球選手ですが)イチロー氏が、日本球界では前人未到の7年連続首位打者のタイトルを記録し、米メジャーリーグに渡って大活躍する選手になろうとは、プロ入り時点では誰一人として予想した人はいなかったでしょう。メジャーリーグ移籍後もシーズンMVP獲得をはじめ、2回の首位打者と1回の盗塁王に輝き、日米通算4367安打という超人的とも言える記録を残して、米野球殿堂入りを果たしたのです。

なぜイチロー氏が偉大な選手になれたのか

プロのスカウトからはドラフト4位程度の評価だったイチロー氏が、なぜ球史に残るような偉大な選手になることができたのか。イチロー氏は先に引用したスピーチの通りその秘密を、「夢」と「目標」の違いに若くして気が付き、「夢」ではなく常に「目標」を見つめ追い続けてきたからであると、野球殿堂入りに際して打ち明けたのです。

「夢」は漫然と見るものですが、「目標」は確実に達成を目指すものです。そして「目標」達成には、そこに向けた執念と努力が不可欠でもあります。イチロー氏の打ち明け話は、自身は決して天才ではなく「目標」達成に向け、たゆまぬ努力の結果としてなし得たのだと、成功を目指す全ての人にヒントを与えてくれた、筆者の目にはそう映りました。

「夢」を持つことは大切です。しかし「夢」を持つだけでは、「夢」は「夢」のままで終わってしまう可能性が高い。だからこそ、「夢」を「目標」に変えてその達成を繰り返し積み重ねていくことが大切であると、イチロー氏は示唆しています。このイチロー氏のスピーチの趣旨は、実は以前拙稿でも取り上げた、大谷翔平選手が高校時代に打ち立てた、「夢」の実現に向けたロジックツリー記載事項の徹底という考え方に酷似しているのです。

大谷選手の高校当時の「夢」は、将来メジャーリーグで大活躍する自分でした。それを「夢」のままで終わらせないために、高校卒業までの具体的な「目標」として置いたのが、「プロ野球8球団からドラフト1位指名されるような選手になる」というものでした。そして、彼のロジックツリーでは、その「目標」の達成に向けて今具体的に何をするべきか、8つの項目が記されていたのです。結果として、大谷選手は5年間の日本プロ野球での活躍を経て、今やメジャーリーグで世界NO.1とも言える活躍をするに至っているのです。

大谷翔平選手とイチロー氏に共通するもの

「夢」を実現するための「目標」には、具体的な「ゴール」と「期限」が必要でしょう。そして「ゴール」は数字で表せるものであるならば、それが一番明快な「ゴール」になるでしょう。同時に重要なものは「期限」です。「期限」のない「目標」を置くことは、ただダラダラと時が流れてしまうことになりかねません。高校時代の大谷選手は「8球団からのドラフト1位指名」を「目標」とし、高校卒業時を「期限」としていたわけです。

そして設定した「期限」到来時には、必ず「目標」達成の成否を判断して、その上で新たな次なる「目標」を立てる必要があります。イチロー氏の言葉にある「自分の目標を定め続けた。そして、継続することが実現への礎を作るのだと学んだ」のくだりは、まさに「目標」を「期限」ごとに書き換えながら継続していくことの重要性を言っているのです。「目標」は具体的な「ゴール」と「期限」あって成り立ち、それを書き換えながら継続していくことで最終的な「夢」の実現につながる、ということなのです。

イチロー氏は話の最後に、「若い人には大きな夢を見てほしい。一方で『夢』と『目標』の違いを知ってほしい。『夢』を『目標』にするには、何が必要なのかを真剣に考え抜いて」とエールを送っています。「何が必要なのか」は、大谷選手が提示したロジックツリー思考の中身をどう作るのか、ということでもあります。球史に残る2大メジャーリーガーに共通する「目標」達成法は、「夢」の実現に向けた“最強の秘訣(ひけつ)”ではないでしょうか。

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