「介護が必要になるのは高齢になってから」と思いがちですが、実はそうとは限りません。まだ働き盛りの40代や50代でも、病気やけがをきっかけに、突然介護が必要になるケースもあります。
今回は、40歳から64歳の人が介護保険のサービスを利用できる条件について、分かりやすく解説します。
介護保険制度とは?
介護保険制度は、介護が必要になった高齢者やその家族を、社会全体で支えていこうという理念のもと、2000年にスタートした公的制度です。運営は、市町村や東京23区などの自治体が担っており、全国共通の仕組みとして提供されています。この制度では、一定の条件を満たすことで、介護サービスを1~3割の自己負担で利用できます(負担割合は所得などによって異なります)。現金が支給されるのではなく、本人の状態に応じて必要な介護サービスを受けられるのが特徴です。
介護保険を利用するには、まず市区町村に申請し、訪問調査などを経て「要介護認定」を受ける必要があります。認定は「要支援1」から「要介護5」までの7段階に分かれており、区分に応じて利用できるサービスの内容や量が異なります。
介護保険サービスを受けるための条件とは?
介護保険を利用できるかどうかは、加入者の年齢や健康状態によって異なります。まず、65歳以上の人は「第1号被保険者」となり、加齢に伴う心身の衰えによって介護が必要と認定された場合に、介護保険サービスを利用できます。一方、40歳から64歳までの人は「第2号被保険者」にあたり、サービスを受けるには一定の条件があります。この世代では、国が定める「特定疾病(16の病気)」が原因で介護が必要になった場合に限り、介護保険サービスの対象となります。
例えば、63歳の人が交通事故により介護が必要になったとしても、その原因が特定疾病に該当しなければ、介護保険サービスを利用することはできません。
●第2号被保険者が介護保険の対象となる16の特定疾病
・がん(治癒の見込みがないと診断された場合)
・関節リウマチ
・筋萎縮性側索硬化症
・後縦靱帯骨化症
・骨折を伴う骨粗鬆症
・初老期における認知症
・進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
・脊髄小脳変性症
・脊柱管狭窄症
・早老症
・多系統萎縮症
・糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
・脳血管疾患
・閉塞性動脈硬化症
・慢性閉塞性肺疾患
・両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
40代や50代でも、これらの特定疾病が原因で「要支援」または「要介護」と認定された場合には、介護保険サービスを利用できます。
参照:厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」
まとめ
介護保険制度は、高齢化が進む中で、介護が必要になった人やその家族を支えるための大切な仕組みです。65歳以上の方は、加齢に伴う心身の衰えが原因で介護が必要と認定されれば介護保険サービスを利用できます。40歳から64歳の方でも、特定の病気(特定疾病)によって介護が必要になった場合には介護保険サービスの対象となります。
「介護はもっと先の話」と思いがちですが、万が一に備えて制度の仕組みを知っておくことはとても大切です。いざというときにスムーズにサービスを受けるためにも、自分や家族がどんなときに介護保険を利用できるのか、あらかじめ確認しておきましょう。