今回は、国民年金保険料を未納のままにしておくリスクや、払えないときの対処法について解説します。
国民年金保険料の未納率は約16%
国が用意する公的年金には、日本に住む20歳以上60歳未満の全ての方が加入対象となる国民年金(基礎年金)と、会社員や公務員などが加入対象となる厚生年金があり、どちらの保険料も滞りなく支払う義務があります。会社員や公務員が加入する厚生年金は、保険料が給料から自動的に引かれるため、未納になることはほとんどありません。一方、自営業や無職の方などが加入する国民年金は、自分で毎月支払う必要があるため、「うっかり忘れた」「収入が不安定で払えない」といった理由で未納になるケースもあります。
厚生労働省の「令和6年度の国民年金の加入・保険料納付状況」によれば、国民年金保険料の最終的な納付率は84.5%。つまり、残りの約16%の人が保険料を払えていない状況と推測できます。
年金保険料を未納のままにするとどうなる?デメリットは?
国民年金保険料の納付期限は、原則として「納付対象月の翌月末日」です。これを過ぎても支払わずに放置していると、ペナルティーが発生します。まずは電話や文書による納付の案内(納付勧奨)が届きますが、それでも支払いが確認できない場合は、段階的に文書での通知が送付され、最終的には「督促状」が送られます。この時点で延滞金が加算されるほか、さらに放置すると財産の差し押さえに至る可能性があります。
個人資産などが差し押さえられてしまうことになれば「もっと早く対応しておけば……」と後悔することもあるでしょう。支払いが難しいと感じたら、深刻になる前に、早めに年金事務所に相談しましょう。
●年金保険料を未納のままにしておくデメリットは?
年金保険料を未納のままにしておくと、将来さまざまなデメリットがあります。
まず、老齢基礎年金は、保険料を納めた期間によって受け取れる金額が決まります。そのため、未納期間があると、その分だけ受給額が少なくなってしまいます。さらに、年金を受け取るためには、納付済期間や免除された期間などを合わせて「10年以上」の加入期間が必要です。これを満たしていないと、そもそも年金を受け取る資格が得られません。
また、万が一のときに支えとなる「遺族年金」や「障害年金」も、未納があると受け取れない場合があります。例えば、事故や病気で障害を負った際や、家族を残して亡くなった際に、保険料の未納が原因で年金が支給されない可能性があるのです。将来の自分や家族を守るためにも、保険料の未納は早めに対処することが大切です。
国民年金保険料を万が一払えない場合はどうしたらいい?
収入が少なかったり、経済的に厳しい状況にあったりするときは、国民年金保険料の支払いが難しいこともあります。そんなときは、「保険料免除制度」や「納付猶予制度」を利用しましょう。●保険料免除制度
本人・世帯主・配偶者の所得が一定額以下、または失業してしまった場合など、保険料の支払いが困難な事情がある方は、申請により保険料の一部または全部が免除される制度です。免除される額は、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類があります。
●保険料納付猶予制度
20歳以上50歳未満の方で、本人と配偶者の所得が一定額以下の場合には、申請により保険料の納付を「一時的に先延ばし」できる制度です(猶予)。こちらも申請が必要です。
●学生納付特例制度
20歳以上の学生が対象で、在学中に国民年金保険料の納付を猶予できる制度です。学生は収入が少ないこともあり、保険料の納付が難しい場合もあります。この制度を利用することで、在学中の保険料支払いを先送りにできます。
申請は、市区町村の役所や年金事務所で行えるほか、郵送や「ねんきんネット」でも可能です。
保険料免除・猶予を申請するメリット
免除や猶予の制度には、将来の年金を確保するための大きなメリットがあります。まず、申請によって認められた免除期間は、たとえ全額支払っていなくても、将来の老齢年金の受給額に一部反映されます。
例えば、全額免除された期間については、保険料を納めた場合の2分の1に相当する年金額が支給となります。一方、猶予制度を利用した場合は、その期間の年金額への反映はありませんが、後から追納でき、将来の年金額を増やすことが可能です。
また、免除や猶予の手続きをしておけば、万が一の障害や死亡といった事態が起きた際にも、条件を満たせば障害年金や遺族年金の対象になります。制度を活用することで、もしものときの保障を確保できます。
●保険料免除や猶予制度を利用した場合は、10年以内に追納を
国民年金の免除や納付の猶予、学生納付特例を受けると、全額納めた場合と比べて将来受け取れる年金額が減少してしまいます。しかし10年以内に、免除や猶予、学生納付特例を受けた国民年金の保険料をさかのぼって納付することで、将来受け取れる年金額の減少を防げます。
まとめ
年金は、将来の暮らしを支える大切な備えです。保険料をきちんと納めておくことで、老後に受け取る年金だけでなく、万が一のときには障害年金や遺族年金などのサポートも受けられます。もし保険料の支払いが難しいと感じたら、無理をせず、免除や猶予の制度を活用することも1つの選択肢です。将来に備えるためにも、自分に合った方法で年金との付き合い方を考えていきましょう。
参照:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」