年金

パート従業員の106万円の壁は撤廃に!年金制度改正法案の中身とは?

厚生労働省から年金制度改正法案が国会に提出されました。その中には「106万円の壁」の撤廃や企業規模要件の見直しなど、社会保険の加入拡大方針が盛り込まれています。本記事ではその概要を分かりやすく解説します。

川手 康義

執筆者:川手 康義

ファイナンシャルプランナー / サラリーマン家庭を守るお金術ガイド

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<目次>
厚生労働省から年金制度改正法案が国会に提出されました。その中には「106万円の壁」の撤廃や企業規模要件の見直しなど、社会保険の加入拡大方針が盛り込まれています。本記事ではその概要を分かりやすく解説します。

106万円の壁が撤廃されます

現在、月額8万8000円(年収約106万円)以上で働くパート従業員は、社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する必要があり、これがいわゆる「106万円の壁」と呼ばれるものです。

この壁を避けるために勤務時間を調整する人も多く、特に年末の人手不足の要因として大きな社会問題になっています。

しかし、今回国会に提出された年金制度改正法案には、この「賃金要件」の撤廃が盛り込まれており、法案が成立すれば、賃金に関係なく週20時間以上働く人は社会保険に加入することになります。
106万円の壁,厚生労働省,賃金8.8万円

106万円の壁が撤廃されます(出典:厚生労働省)

この見直しの背景には、最低賃金の上昇があります。現在でも、最低賃金が高い首都圏などでは年収106万円以上のパート従業員が増えています。今後、全国的に最低賃金が1016円以上となれば、どの都道府県でも週20時間以上働く方は社会保険の加入対象となり、106万円の壁が実態に合わなくなるため、撤廃の方向となったのです。

なお「賃金要件」の撤廃は法律の公布から3年以内とされ、全国の最低賃金の状況を見極めて判断されます。

企業規模要件が撤廃されます

現在は、従業員数が51人以上の企業で働くことが、社会保険加入の条件とされており、これを「企業規模要件」と呼びます。この要件も、10年かけて段階的に撤廃される方針です。
社会保険加入の企業要件,厚生労働省

社会保険加入の企業要件は段階的に撤廃されます(出典:厚生労働省)

具体的には、2027年には従業員36人以上、2029年には21人以上、2032年には11人以上、そして2035年には10人以下の企業も対象となります。つまり、将来的には企業規模にかかわらず、週20時間以上働くパート従業員は全て社会保険に加入することになります。

個人事業所の適用対象が拡大されます

今回の法案には、社会保険の適用対象となる「個人事業所」の範囲拡大も盛り込まれています。これまでは、農業や宿泊業など一部の業種は社会保険の適用対象外とされていましたが、今後は常時5人以上を雇用する個人事業所であれば、業種にかかわらず社会保険の対象となります。
社会保険適用拡大,個人事業所

個人事業所の適用対象が拡大されます(出典:厚生労働省)

ただし、2029年10月時点ですでに存在する事業所については、経過措置として一定期間、適用が猶予されます。

社会保険に加入対象となった方への支援策

企業規模の要件撤廃などにより、新たに社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する方は「社会保険に入ると手取りが減るのでは?」という不安もあるのではないでしょうか。

そのため政府は、手取り額が急激に減少しないように、本来は労使折半(50%ずつ)で負担する保険料について、会社の負担割合を増やし、従業員の負担を軽減する措置を講じる方針です。
社会保険加入対象拡大,支援策,厚生労働省

社会保険に加入対象への支援策が実施されます(出典:厚生労働省)

例えば、年収106万円(月額8万8000円)の方の厚生年金保険料は月額1万6104円で、本来ならば従業員と会社がそれぞれ8052円ずつ負担します。法案では、従業員の負担を25%、会社の負担を75%とし、従業員は4026円、会社は1万2078円を負担します。なお会社が追加で負担した分については、国が全額を支援します。

この措置は3年間の時限措置であり、負担割合は月額賃金に応じて異なる点に注意が必要です。なお、この支援措置によって将来の年金額が減ることはありません。

まとめ

今回の年金制度改正法案の目的は、パート従業員やアルバイトなど短時間労働者にも公平で安心な社会保障を提供することです。本法案における社会保険に関する主なポイントは以下となります。

・「106万円の壁」が撤廃され、賃金にかかわらず週20時間以上働く方は社会保険に加入
・勤務先の規模に関係なく、段階的に全ての企業に社会保険が適用される
・個人事業所の除外業種も見直され、原則として全ての業種が対象に
・社会保険加入による手取り減少への不安に対して、国が支援策を講じる


社会保険制度の適用範囲が広がることで、従業員側には将来の年金額が増えるなどのメリットがあります。一方で、国にとっては社会保険料の確保が年金制度維持の鍵であり、今後も保険料確保につながる制度改正は続くと思われ、動向には注視しておく必要があります。

〈参考〉
厚生労働省
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