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泣いている子を助けるな!は常識?非常識?

道端で泣いていた女の子を助けてあげた!つもりだった男性が逮捕されてしまう事件が埼玉県で起きました。善意と助け合い、そして子どもを守ることをどう考えていけばいいのかを問いかけている事件です。

筑波 君枝

執筆者:筑波 君枝

ボランティアガイド

誘拐?人助け?

泣いてる子
泣いている子に若い男性が声をかけたら、アブナイ?
埼玉県である“事件”が起こりました。6歳の女の子を自動車で連れ回した20歳の無職男性が未成年者誘拐の疑いで警察に逮捕されたという事件です。乗用車に乗せ、約11キロ離れた某市の駅前交番近くまで連れ回した疑いがもたれています。

このニュース、パッと聞くと「また、小さな子をターゲットにした犯罪が!」と眉をひそめる方が多いことでしょう。ガイドも小学生の子がいますので、こういうニュースを聞く度に「変質者」という言葉が頭をよぎり、背筋がぞっとします。

でも、よくよく読むと、男性は「自宅近くの道路で女の子が泣いていたので声をかけると、『某市に住むおばあちゃんのところに行きたい』と言ったので連れていってあげる途中だった」と供述しているそうです。祖母の住所がわからないため、交番で尋ねたところ、不審に思った警察官が車の中に女の子がいるのを見つけ、逮捕したとのこと。女の子は教科書のことで母親に叱られ、外で泣いていたのだとか。

そういう背景を聞くと、「あら、そうなの……」と怒りがトーンダウンしませんか? 要は困っている子がいたから「どうしたの?」と声をかけた。そして男性なりに何かしてあげたいという“善意”の行動だったわけですから……。
「そんなの言い訳よぉ!」
と思う方もいるかもしれません。まぁまぁ、事の真偽は置いておき、ここは男性の言葉を100%信じて、話を進めますねぇ。

誘拐犯は警察に道を聞かないのでは……?

いかのおすし
いか…知らない人についていかない。
…他人の車にのらない。
…おおごえを出す。
…すぐ逃げる。
…何かあったらすぐしらせるの意味。大切なことはわかるけれどねぇ……
確かに、疑われても仕方ないでしょう……と思う面はあります。いくら泣いている子どもが望んでいたからといって、知らない子を車に乗せて、親の許可も得ずに何kmも離れた場所に送り届けようという“善意”は、首をかしげさせられます。

ましてやこのご時世。「いかのおすし」なんて言葉を小学校で学ぶ時代です。どこの親だって「知らない人についていってはいけない」と、子どもに口を酸っぱくなるほど言っています。その判断を自分では充分できない年代の女の子を乗せてしまった時点で、まずいでしょう! 非常識といわれても仕方ない。それは認めます。

でも、20歳という年齢は大人とはいえ、まだ未熟です。そもそもこの男性は「いかのおすし」なんて知らなかったかもしれません。泣いている子どもをなんとかしなくてはという思いが先走ってしまい、その行動がどんな影響を与えるかまでには、考えが及ばなかったのではないでしょうか。

女の子の側だってやさしそうなお兄ちゃんとのちょっとした冒険気分で、泣いたことは吹っ飛び、わくわく気分だったかもしれません。

そう思うと、思慮に欠けていたとはいえるけれども、一方的に責めるのも気の毒です。しかも、逮捕するというのはどうでしょうか。普通に考えて、誘拐犯が警察に道を聞くでしょうか。男性を署内で待たせて、子どもに事情を聞いたり、親や祖母に連絡したりといった対応ができたのではないでしょうか。警察の側にも「若い男が幼女を連れている!アヤシイ!」という先入観があったことは容易に想像がつきます。

なによりも、もしかしたら、この男性、これをきっかけに「泣いている子どもを助けてはいけない」ことが現代の“常識”と思ってしまったら、残念だなと思います。
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